触れれば消える隠れ鬼
「なぁ・・・・なんか、音しないか?」
最初に疑問を投げ掛けたのはルイだった。
「・・・?何か聞こえるの?ルイ」
「いや、さっきから何かひっかく様な音がさ・・・小さいけど」
ルイに言われ、耳を澄まして見る
・・・・カリ・・・・カリ・・・
・・・確かに、小さいが音が聞こえる。
「本当だ・・・でもどこから・・・?」
水沢も疑問を持ち始めた時、
「・・・!皆さん!」
ベットの方で、来宮の呼び声が聞こえた。
「しげる・・・?何かあったのか?」
駆け寄ったルイが聞く。
「・・・」
来宮は無言で自分の寝ていたベットの縁の方を指差す。
何もない様に見えたが、よく見ると何か封筒らしき物が見える。
「・・・これって、もしかして・・・」
「中、見てみるけど・・・」
そういい、ルイは無造作に封筒を破った。
中に入っていたのは、小さなカプセル状の薬とメモ。
「なにこれ・・・えっと『password No.8 人探し』・・・!?」
まさかの発見。こんな所にあったとは・・・
「とりあえず・・・『保険室内に居る祈綺みさとパスワードを探し出せ。制限時間は2分間。時間内に見つけられなかった物は消える』・・・2分ってすぐじゃん!っていうかみさ、この部屋にいるのか!?」
ルイが言った直後に、どこか遠くの方で非常用のベルが鳴る様な音が聞こえる。
「皆、慌てないで。私達は私達でやるべき事があるはずよ」
一瞬皆が動揺するが、九条院の一言で少し落ち着いた。
「とりあえずこのパスワードには時間制限がある・・・消えるの意味が分からないけど急いで見つけた方がいいわね・・・それに、パスの他にも消えた祈綺さんも此処にいるのだから、手分けして探しましょう」
「人探しか・・・俺とあいかはみさを探すから、しげるとひいなと水沢はパスを探しといて!」
ルイが言った後、保険室内を探し始めるが、パスも祈綺も見つからない。
「このままじゃタイムアウト・・・時間切れだよ・・・仕方ない」
ルイは一旦止まり、目を閉じる。
キィィン・・・と一瞬耳鳴りのような音が聞こえて来る。
「・・・生命反応・・6・・場所は・・・棚か・・・!」
そう呟くとルイは保健室の端の方にある戸棚の扉を開ける。
そこにいたのは、うずくまり、若干憔悴した様な祈綺の姿。
「みさ、見つけた!」
ルイが叫ぶ。
「みさ先輩!大丈夫ですか!」
「・・・あれ・・・私は・・・」
棚の中から祈綺を出し、来宮が呼び掛けるとふらふらと起き上がった。
「そうだ、私・・・迷惑かけてすみません・・・」
「大丈夫。みさは見つかったし、後はパスだけか・・・」
「あの、祈綺さん、さっきからその手に握ってる物ってもしかして・・・」
私に言われ気がついたのか、祈綺は握っていた手のひらを開く。
手のひらの中には、バスワードと書かれた破られた紙。
「これパスじゃん!でも、肝心な所が破れてるし・・・」
困った様に話すルイ。時間もそろそろ2分になる。
「その紙のもう片方を探せばいいんですよね・・・」
横から入ってきたのは祈綺。
紙を持っている方の手を再び握る。
「探し物は得意なんです・・・特にこういった半分に分かれた物の片方を探すのは・・・」
そう言いながらまた手を開くとそこから白い鳩が飛び立つ。
「もう片方に引き寄せられて・・・見つけるはずです。ほら、あそこに」
しばらく周囲を飛んでいた鳩は、薬棚のある列に止まった。
そこの場所を探してみると、薬瓶の間に挟まっている紙を見つけた。
「・・・凄いです、祈綺先輩!」
来宮が歓喜の声を上げる。
「そんな事ないです、たったこれだけしか・・・できない・・・・から・・・」
突然倒れた祈綺。 よく見ると体中に黒い反転の様な物が浮き出ている。
「わわっ・・・・何これ、どうすれば・・・!」
慌てだすルイ。
「もしかして、これじゃないかな・・・?」
そういって水沢がルイに差し出したそれは、最初の封筒に入っていたあの薬だった。
「何が起こったのかよく分かんないけど・・・とりあえずこれで治るのか?」
半信半疑だったが、薬をみさに飲ませる。
すると、体中に出ていた黒い斑点はいつの間にか消えていた。
「とりあえず、無事でよかったですけど・・・あれって一体何だったんでしょうか・・・」
しばらくした後、来宮が言う。
ベットには祈綺を寝かせておき、水沢は一旦保健室の外に出ていってしまったため、現在この部屋には女子しかいない状況である。
「とりあえず次のパスワードの謎ね・・・見だけでは何も書いていないわ・・・見るための条件があるのかしら・・・?」
そういっている九条院の手には、「No.8password」とだけ書かれた紙が。
「それにしても・・・パスワードに使われている言葉って全部ランダムなのかな・・・?」
私は率直に思った疑問を 口に出す。 「そうね・・・・『栗須リョウ』、『2月29日』・・・この2つに何か関連性があれば・・・」
そう九条院が呟く。
そうして私達が頭を悩ませている時・・・
「ひいなサンっ、あいかサンっルイさんっしげるっ、ただいまっ!」
灰葉達が帰ってきた。
祈綺と同じく行方不明だった祀木を連れて・・・
触れれば消える隠れ鬼
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