切れれば危うし糸電話


一つ目のパスワードが手に入り、手形の謎も残ったが、一旦保健室に行くことになった。

とりあえず探索行動を取る事になったが、灰葉は予知が出来るということで保健室に残ることになった。

だが灰葉を一人だけ残すというのは俺自身色々と心配であった・・・

「一応、俺も残るから」

気がついたら時には声が出ていた。

「ほら、もし一人の時に灰葉に何かあったらこれから大変だろ?だから監視とかの為にも誰か残った方が良いかなって」

「ルイさん・・・」

灰葉が感動した様にこちらを見ている。

「それじゃあ、灰葉さんと夢霧さんはここで待機していて・・・・」

ひいなが言いかけたその時であった。


携帯の着信音が鳴った。

「え・・・・私の携帯から・・・?」

着信音はひいなの携帯から鳴っていた。

「まさか、エニグマからとか・・・」

あいかが呟く。

「とりあえず、出て見るわ・・・」

そういいながら携帯に出たひいな。


『ひいなっ!!あんたどこにいんのよっ!!携帯にも出ないで心配したんだからね!!!』

ひいなから遠くにいる俺にも聞こえるぐらいの大音量。

「その声・・・るるか?るるかなの!?」

ひいなもまた叫ぶ様に答える。

「貴方どうやって・・・携帯は確か圏外だったはず・・・」

『【ひいなの携帯に繋がって】って私の携帯に『命令』したの!とりあえず、無事なんだね、良かった・・・!ひいな、今どこにいるの?』

「とりあえず詳しくは言えないけど、私たちは学校にいるの・・・」

『学校!?今すぐそっちに行きたいけど、ちょっと色々あって親に自宅待機って言われてて・・・ごめんね』

「いいのよるるか、ありがとう・・・それじゃあ一旦切るわね」

『うん、分かった・・・あ、ちょっと待ってね・・・えっと、ひいなと一緒にいる人達の中に、『崇藤タケマル』って人、いる?』

何故かタケマルちゃんの名前が呼ばれた。

「・・・いるけど?」

『その人と変わって欲しい人がいて・・・ちょっとまってて』

「・・・崇藤さん」

ひいなが携帯を渡す。

「オイ、誰だ?」

乱暴な口調でタケマルちゃんが携帯に出る

『・・・・タケマル君、今どこ?』

「人違いだ」

声が変わった瞬間すぐさま携帯を切り、ひいなに携帯を返した。

その顔に若干焦りの様な恐怖の様なものが見えた気がしたが、あまり深く問わない事にした。

「それじゃあ、改めて灰葉さんと夢霧さんはここに残っていて」

「・・・分かったのだ」




「次のパスワードはシャワー室の排水口か・・・ってあんま落ち込んでんなよ、灰葉」

皆が出て言った後、予知をして、少しうなだれたような灰葉に声を掛ける。

「皆灰葉の事嫌ってなんかいないしな。むしろ頼ってるからこそこうやって別行動にしてるんじゃないか」

「ルイさん・・・」

そう言ってやると、少し元気を取り戻した様だ。

「そういえば、ルイさんって男だったよな?」

一瞬、殴ってやろうかとも思ったが、そう思われなければならないと思いだし、とどまった。

「・・・・あ、うん・・・その、一応は・・・その、うん・・・」

「本当なのか?」
灰葉がにじり寄って来る。

取りあえず離れようと動いたら、ポケットから学生手帳が落ちた。

俺が拾いあげるよりもさきに灰葉が拾うのが早かった。

「これってルイさんのだよな・・・ってあれ?」

ペラペラと灰葉が生徒手帳のページをめくって行く。そしてついに恐れていた事態が・・・

「・・・えぇっ!!ルイさんって女だったのか!?」

「おーいスミオ、帰ったぞ・・・」

非情にも、灰葉が叫んだ時、支倉達が扉を開け、入ってきた。


・・・やばい、この流れは非常にやばい・・・!


「・・・夢霧」

「・・・は、い・・・」

タケマルちゃんに、名前を呼ばれる。

・・・そういえば、9月2日に灰葉と同じ質問をされて、その時は男だって言ってたっけ・・・

どうする・・・この状況、どうやって切り抜ける・・・

「ルイ、大丈夫・・・?」
「あぁあ・・・・あいか・・・!」

思わず来たばかりのあいかに飛び付く。

「ルイさん・・・その、何かごめんなのだ・・・・ところであいかサン、他の女子達は・・・」

「あの二人ならシャワー室に寄ると言ってたけど・・・」

「なっ・・・シャワー室だって・・・!?」

灰葉はすぐさま保健室を飛び出していった。

「あ、ちょっと!とりあえずシャワー室に行かないと・・・」

「待て、夢霧」

すぐさまタケマルちゃんに呼び止められる。

「・・・」

「・・・何で、隠してた?」

予想はしていた。けど、いざとなったときには、言えない。

「・・・厄介、なんだよ。バレると」

その場しのぎの嘘はもうできない。

「・・・バレたら、引き戻されるんだ・・・・・施設に・・・」

あそこには、二度と戻りたくはない。そのための、偽装だった。

「・・・ルイにも、事情があるんです。貴方たちみたいに・・・」

あいかが言う。

「そういえばルイ、どうして灰葉は慌てて部屋を飛び出していったの?」

「あぁ、そのこと何だけど、シャワー室に、パスワードがあったみたいで・・・」

「・・・分かった。皆、行こうか」

あいかを先頭にしてシャワー室に向かう。

・・・大丈夫、だよな・・・この先。

見えない不安だけが、俺の心にまとわりつく。












その声は、誰?