主従は互いに手を取る


「はいはーい、サインとかは受け付けてないからねーっていうかこれじゃあ俺動きにくいかな・・・」

俺のまとわりつくように離れない女子校生達。

噂が広まったのか、後から後から次々とやってきて切りがない。

夕闇の方でも知名度があるというのは嬉しいが、さすがにここまでくるとキツイ。

何とかして女性の群れから抜け出すと、奥の広場の方が何かと騒がしい。

騒いでいる方をちらりと横目で見て見ると、複数の男性が何かがいいがかりでもつけて誰かに絡んでいるようだった。

絡んでいる連中はみたところ成人しているようで、煙草を加えている奴もいた。

絡まれている男の方は学生のようだが背が高く、深緑色のコートを着ている。

顔の方はフードをかぶっておりこちら側からではよく見えない。

人数差は一対三。

絡んできた奴等の方があきらかに人数が多く、有利に見えた。

「・・・見苦しい」

まったく、見ているだけで嫌気がさしてくる。どういう神経してるんだあいつらは。仮にも大人だろ?成人してるんだろ?しっかりしろよ、大人の癖に。

やれやれと思いながらも新たな騒ぎを起こしている奴等に近付いていく。

「・・・チッ」

絡まれている男の方が舌打ちをする。

そんな男の横を堂々と歩いて行きそして

「はいはーい、ちょっと失礼しますっ・・・と!」

集団の一人、俺の近くにいた奴の顔面を思い切り殴る。改心の一撃だ。

「お前!テツオに何しやがった!」

直後、リーダー格と思える男が出てくる。

「はい?今の俺の『殴りから始まるあいさつ』に何か問題でも?」

すかさず俺も笑顔で答える。

「あるに決まってんだよ!あいさつにしたっていきなり殴られたっ・・・・」

後ろからうるさく出てきた奴の顔には回し蹴りを食らわせてやった。

「どうやら失礼を致したらしかったので『回し蹴りで続ける謝罪』で謝らさせていただきます。ちなみに最後には『締めの背負い投げ』が待っておりますので」

そういい、リーダー格の男に軽く会釈をし、微笑む。

「っ・・・・!わ、分かった!今まで騒いだ事は全部謝る!だからこれ以上は・・・」

「そうですか。それでは」

低腰体制になった相手の腕をつかみ、背負うようにして投げる。

「・・・さてっと」

一通り片付いてすっきりした所で、自分のこういが先ほど以上に周りの気を引いていた事に気付く。

どうやってこの場を切り抜けるか考え始めた時、ふと先ほど片付けた奴等に絡まれていたコートの男が視界に入った。

何を思ったか反射的にそいつの腕をつかみ、

「・・・コイツ、俺の連れだから」

咄嗟にそういい、そいつの腕を引っ張りつつ、その場から離れる。


「オイ!テメェ、いい加減に離せっ!」

大体人気のない所についた時、今まで連れ回していた男が声を上げた。

「とりあえずここまでくれば大丈夫かな・・・・ってあぁ、あんた、散々連れ回してごめんな!」

一息ついた後にとりあえず、謝っておく。

「・・・・・まぁ良い。ところで、何で助けた?」

「あー、ちょっとあいつらにムカついてたし、そんなに気にしないで。なんなら貸しにしてもいいけど」

「誰がするかよ・・・」

若干相手が悪態をついたような気もしたが、気にしない。

このまま帰そうかと思ったが、少し考えた後にソイツの顔と向き合う。

「ねぇアンタ、俺のマネージャーになってよ」

「・・・・は?」


それが運命の出会い。
これから始まる、奇跡のきっかけ。