メモ | ナノ

Diary


私の願い

良い人間かと聞かれればそうではない。
高校で出会った彼と駆け落ちし、そのまま結婚した私だ。
出会ったのはある意味一目惚れ。そのまま成り行きで付き合い始める。
高校は中退、現在三人の子持ち。
古典的に駄目な人間だと馬鹿にされる事もあったが、別に私は気にしていない。
夫婦生活満喫中なのに、彼と初めて合った場所であり、年の離れた弟が通う高校に顔を出している。

そんな弟が入っている部、もといオカルト研究会。先生も含め三人しかいないが彼らの活動に顔を出すのが私の日課の様になっていた。
高校には、中学の生徒も二人だが、特例で来ていた。長い髪を垂らした、無駄に背が高く何時もへらへらした男子と、中身が私とそっくりな、私のの妹の様な女子。

何時も皆で騒いでいたりして、楽しかった。
時には、無茶もしたりして何処かに出かけたり。
本当に楽しかった。

そして、私の娘達。彼には君と殆ど似ている所がない、と馬鹿にされたりしたが、弟は軽く笑いながら、「銀の眼が姉さんと似ている」って、言ってくれた。

私の娘達も、私の弟も、私にとって、命より大切な存在だ。
守ってみせる。そう決めた筈だった。




身体が…特に胸の辺りが、焼ける様に痛い。
立ち上がろうと、動こうとしても、私の身体は鉄の様に重く、動かせない。

今思い返せば、私の人生は後悔ばかりだったかもしれない。

親に連れて行かれる愛しい娘の手を、私は掴めなかった。

先生に止められて、目の前で井戸に落ちて、頭を奪われた弟を助けることもできなかった。

私は馬鹿だ。守ると決めた人を、守れなかった。そして私の命すらも……
このまま、私は殺されるのだろうか……
今更命は惜しくない。だが、心残りはまだまだある。


嗚呼、もしも私の意思を、記憶を、継ぐ者がいれば、
どうか、どうか、どうか、身勝手な、身勝手すぎる私の願いを聞いてください。

どうか、ここで今我が子を残したまま見ず知らずに殺されていく愚かな私の替わりに、私の娘を愛してあげてください。

どうか、ドクロの人柱となり頭を奪われた弟を前に、何もできなかった無力な私の替わりに、今もなお自分を探している弟を助けてあげてください。

誰よりも愛しい、私の娘を、誰よりも恋しい、私の弟を、そして、囚われ続けている私自身を、助けてください。



そして、私は





comment:(0)
2011/10/19 (19:34)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -