帆の双子 ※ in...VP 私が「人間」として自立してきた頃、とても仲がよかった馴染みの薬屋の双子がいた。 早くに母を亡くし、父の顔も見た事がない双子。 異国の血を継いでいる事から周りから忌み嫌われていたけど、私は特に気にしてはいなかった。 二人とも生まれつきの病で、姉の方が特に重く、外に出ている所を私は一回も見た事がなかった。妹の方はまだ動けるらしく、動けない姉の代わりによく動き、薬を調合したり、兎に角よく働いた。 姉は紫の髪で黒い目の帆火。 妹は紅い髪で紫の目の帆波。 そんなとても仲の良かった双子はある日、ぱったりと姿を消してしまった…… ずちゃり、と音がする。「それ」が動いた音だった。 潰れた脚、抉り取られた両目、傷だらけの身体、血塗れた紫の髪…… 最早「人」とは呼べない「それ」を一瞥し、伸ばしてきた手にナイフを突き刺す。直ぐさま「それ」は嗄れた悲鳴を上げるが、暫くして声を紡ぐ。 「……ガァ゛……エ゛ッ、……シ゛ィ………テ゛ぇ……」 「…………「返して」?嫌だよ。だってこの身体、何処も痛くないから」 そう言い返すと、「それ」は顔を歪ませ、私に這い寄る。手に突き刺したナイフで動けないのに、何処まで愚かなのか。 「ヤ゛……ア゛ァあァ……チ、ガ……ヴ…」 「一日だけの約束、……ふふっ、そんな約束、したかな。ねぇ、何時言ったか教えてくれる?……あぁ、無理だよね」 だって話せないから。 病の薬と言わせて私は、「声を出せなくする薬」を、酸を彼女に飲ませた。 それでも、「それ」は私に向かって這いずり寄ろうとする。 「何時まで生きてるの?我ながらしぶといな。もうすぐその身体は死んじゃうのに」 私はそう言いながら「それ」の背中にもう一本、ナイフを突き立てる。血が滲み、醜い悲鳴が上がった。 「第一この身体、一度は私にくれたじゃない。それに私とあなたは片割れなんだから、身体もらってもいいじゃない。そうでしょう? ねぇ、「帆波」?」 森の奥の小屋から出てきたのは「赤毛の少女」で、小屋の中には「紫髪の少女」が惨たらしく殺されていて―― fin...12.10.28 |