紫紺の夢痕 in...VP


傷跡が燃える様に痛い。身体を動かそうにも体中に群がるそれらに邪魔され、思う様に動けない。
暗い闇の中、地に臥せる私を見て、目の前の彼女が笑う。

「ねぇ水雲、大丈夫?……もしかしてその程度なのかな」

「っ……帆火ぁ!!」

叫ぶ私を見て彼女はまたクスリ、と嗤った。
目の前に私が必死になって探していたあの子がいるのに、何もできない自分が悔しく、虚しく、憎かった。

「このままこうしていても埒が明かないね。名残惜しいけど……大丈夫だから」

そういうとにっこり微笑んで、鎌の切っ先を私に向ける。

「……死んでも、ずっと一緒だからね」

ああ、此所までなのか。私はここで死ぬのか。
死ぬ事に悔いはない。家族をなくし、友まで失った私にはもう何も――
首元に鎌の先が刺さろうとしたとき、音が聞こえて、彼女が飛び退く。


「――魂を冒涜した罪は重い」




……何でなのかは知らないけど、心地良い。
私は、死んだの?いや、死んではいない、と思う。
そういえば、あの時助けてくれた彼女は誰だったんだろう……

「―――――、水――雲――」

誰かが叫んでる。この声は何処か懐かしい、聞き慣れた声。その声が、私の名前を――

「――って!宵!何であんたがこんな所にいるの!?」
「水雲殿!気が付いたで御座るか!!」

ありえない。何でここに。今日……いや、気が付けばもう明るくなっているから恐らく昨日の事は誰にも話していなかった筈。取りあえず起き上がりざまそいつの頭をはたいておく。――起き上がっただけでも体が酷く痛むから、暫く無理な動きはできないだろう。

「痛いで御座る!感動の再会ではたく必要あるで御座るか!?」
「うるさいわね黙ってなさい!!それより、何であんたがここに――」



――あそこだ!!あそこに化け物に変身する女が――

幾つもの足音に、村人の声。そして金属音。
ああ、間違いない………私は殺される。

「……宵、あんたは逃げなさい」
「駄目で御座る!水雲殿も」
「馬鹿、あいつらの狙いは私よ。逃げても共倒れするだけ」
「しかし……」

足音と話し声は近付く。覚悟は決めた。

「…………ごめん」
「水雲殿?何を――」

言い終わらない内に豹に代わり、渾身の力で、宵を殴り飛ばした。できるだけ遠くに、あわよくば気絶して欲しい位に。
嫌な感触がしたが、急所は外したので死なないだろう。同時に激痛が身体中に走り思わず座り込む。
何とか立ち上がったときには既に、武器を持った村人に囲まれていた。

「やっと見つけたぞ、怪物め!」

村人の一人がそう言うと同時に、周りの村人も声を荒げる。

抵抗はしなかった。身体が痛まなくても結果は同じだろう。



私はうまく生きられたかな?……ねぇ、



―――――――――――
鮮花さんの宵さんお借りいたましたで御座る
この時点で宵さんエインフェリアなってるかなと勝手に予想してます間違ってたらすまない





fin...12.10.23


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