水面の豹 in...VP 村に最近、「黒い生き物」が出るという噂を聞いた。 「確か村の近くの森に出るんだって?」 「そうそう。村の近くの動物がそれに襲われてるんだってさ」 「噂じゃ人も襲われたんだって?」 ああまったく、恐ろしい生き物だね。 皆は口々にそう話す。 恐らくそいつらは知らないだろう。私こそがその恐れられている生き物だと言う事に。 ただ、無暗に襲っている訳ではない。ちゃんと理由はある。話した所で信じてもらえないだろうけど。 お前らに何が分かる。その生き物がお前達を守っていると言うのに。 「………お前もそう思うよね?水雲」 「…………えっ?ああ、そうだね、全く怖い世の中になってきてるもんだ」 どうやら話を振られていた様で、慌てて内心を隠し「無邪気な村娘」を演じる。 私の嘘っぱちな返答を聞き、目の前のそいつらはまた笑う。「私」を貶す事ばかり話して。 この場で変身してそいつらの喉笛を食いちぎりたくなったが、ばれると厄介だから何も考えない事にした。 「あいつ」に会うまで、私は死ねない。そう心に誓ったんだ。 そうして今日も私は森へ向かう。 fin...12.10.22 |