無名の音楽家 in...VP 彼は生まれて永劫、名前を名乗らなかった。 ある時は若者の姿で、ある時は貴婦人の姿で、ある時は老人の姿で、様々な大陸に「彼」は現れていた。 様々なもので旋律を奏で、時には歌い、何時しか彼は多少名のある存在になっていた。 無名の音楽家、白い髪に翡翠の瞳。 「歌は時に、人をも殺せる。気持ち次第で、魔術と同じ力をもつ事もある」 彼は淡々とそう言った。 その人の髪はとても綺麗な純白で、触れたら消えてしまいそうで。 「琥月、だよね。君の名前」 「えっ……あっ、はい」 「君はその力を使い切れていない。放っておけばいずれ君を蝕むだろう」 「…………」 「君には魔術師の才能がある」 名前も知らないその人は、そう言った。 fin...12.07.13 |