過去の微笑み in...mdbk


「……ねぇ、糸島君、起きてる?」

 優しく、暖かい声が聞こえる。
 目を開ければ、当然の様に彼女の姿があった。

「ん……俺、また寝てたか?」

「自分でも分かってなかったんだね、ふふっ」

 目を擦っていると、大人しく控えめに彼女は笑った。

「なんだよ、何か可笑しいか?」

「あっ、違うの。ただ子の時間って糸島君何時も寝てるから」

 そういってまた優しい笑顔を見せる。

「あっ、そうだ糸島君あのね……」

「……弐織、前から言いたかったけど、名字じゃなくて名前で呼んでくれないか?」

「えっ? ……どうして?」

 兄貴と同じ名字を名乗りたくないから、とは流石にそのまま言えない。

「ほら、身内と間違えやすいっていうか……まぁとにかく、いきなりであれなんだけどな」

 とりあえず言い繕うと、彼女は少しむっとした表情になり、直ぐさま何かを閃いたか明るくなった。

「……じゃあ糸島君も私の事、名前で呼んで?」

「はっ? えっ?」

「だってそれだったら、私だって同じ事言えるし、それに前から名前呼んでもらいたかったから」

 彼女はにっこりと笑う。策士か……

「いっ……その…………ゆ、優那……」

「なぁに? 軍戲君?」




fin...12.07.12


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テーマ「人外ファンタジー」
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