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同級生


学級委員


春。桜の季節。おれ、松野おそ松にとってはそんなに大した時期ではない。
でもまあ今日から中学三年だから、受験と言う名の地獄に身を投じる為の心構えなんかを担任がつらつら話していて、中学校生活もあとちょっとか、なんて思いながらも別段寂しくはなく、なんの代わり映えのしない日常の一コマを刻むように今日も机に顔を伏せた。

・・・

「――野、松野!」

「んぁ……?」

「松野、返事!」

「あいっ!?」

反射的に立ち上がって返事をする。新しいクラスメイトたちはどこか嫌なにやけ笑いで拍手を繰り返していた。なにがそんなにおかしいのかぜんっぜんわかんないけど、嫌な予感は拭えない。黒板に顔を移せば、【学級委員 松野おそ松】とでかでか書かれていた。

「え……、ちょ、っはぁ!?!」

「そいじゃ、小日向と松野長男!
一年間よろしく頼むよ〜。」

思いっきり担任の浜ちゃん(中年のおじちゃんだ)に噛みつこうとしたその口は、寸出のところで言葉を飲み込んだ。待って、今、『小日向』って言った?
よく見れば、教卓に立って苦笑いを零している人物は、紛れもなく小日向だった。小日向すみれだった。学級委員なんて面倒な役職はごめんだけど、同じ仕事をする女の子が小日向。赤くなる顔を隠すように、とっさに鼻の下を擦って「しょーがねーなぁ!」と笑って見せた。

「また一年間よろしくね、松野くん。」

教卓に近寄れば、小声でそう言ってはにかむ小日向がいて、おれはこの貧乏くじの学級委員を内心1ミリぐらい感謝した。


推薦を押し切られて学級委員になった小日向に、係を決めるHRで爆睡していたおれ。
もともと押しに弱い小日向は頼み事は断れない質で、これで学級委員も去年に続き二年連続だった。多分去年もおれと小日向のクラスの担任だった浜ちゃんも、それを知りつつ、でもそんな小日向を不憫に思ったのか、元クラスメイトのおれを委員長にしたんだと思う。まあ、爆睡してたおれもほんのちょっとは悪かったかもしれないけど、「はい」って返事しただけで本人の許可なく役職を決めるなんて、どうかと思うんだよね。小日向が一緒じゃなかったら学級委員なんてぜってーやんないし。

まあ押し付けられた役職だけど、小日向にいいとこ見せたいし、早く帰りたいし。司会進行をしてパパッと役職決めが始まると、小日向はきれいな字で黒板に名前を書いていった。おれでもまだ全然クラスの奴らの顔を覚えてないし覚えようとしてないってのに、小日向は真剣にクラスメイトの名字と顔を関連づけていた。そーいうとこ、真面目なんだよなぁ。任されたらとことんまでやっちゃうところ。
HRが終わった後、始業式が始まる。途中で隣のクラスの列のトド松におれが最前列で自分のクラスを引いている姿を目撃され、大爆笑された。あいつ後でしばく。そりゃおれだって、列の先頭なんて一生来ることないと思ってたし。学級委員って仕事多すぎ。もうやめたい。そう考えるたびに隣の小日向が目に入っちゃって、もうちょっとだけ続ける気になった。



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