同級生 | ナノ

同級生


目が合う


結局、中学一年の私は一度としておそ松くんと話をする機会は訪れなかった。
チョロ松くんとは随分仲良くなって、クラスが離れてもきっとすれ違えば話をするし、多分お互い、仲の良い友人、と呼べるぐらい仲良くなれたと思う。チョロ松くんは意外と性格が悪いことや、小学生の頃は今とは違い悪さばかりをしていたと黒歴史までも暴露してくれて、結局私も二年に進級するまでにはもうチョロ松くんにおそ松くんへの思いの丈を洗いざら吐いてしまっていた。

中学二年に上がると、クラス替えで奇跡的にもおそ松くんと同じクラスになった。仲の良い友達とは別れてしまったが、見ているだけの一年間だった私に、クラスメイトとしてでも話せる機会ができたことに、素直に喜べた。それぐらいには、今の自分は前より自信が持てるようになった。
結局推薦された学級委員に今年も就任し、仕事を口実におそ松くんの話ができることを素直に喜び、そして後ろの席になれば授業中もおそ松くんの姿を追えることを密かに楽しみにした。

が。そんな嬉しいことばかりが続くわけではなかった。
その年の夏、専業主婦の母の体に腫瘍が見つかり、入院してしまったのだ。部活をやめ、家の事を代わりにしたり、母の様子を病院に見に行ったり、その傍らで委員の仕事や勉強をこなす日々に体力と精神が追いつかず、おそ松くんを密かに見守る暇もなくなってしまった。
結局、半年にわたってそれは続き、冬に入り、おそ松くんの反抗期が終わっている頃には母の容態も良くなり、私もすっかり家事が得意になった。もちろん、精神的にも辛い思いはしたけど。それでも、おそ松くんのハンカチを握りしめていたら、やはり勇気をもらえるのだ。

結局私は、一方的な思い出にすがって、一方的に助けられまくっていたのである。そんな中学二年だった。

それから嬉しいこともあった。
中学二年の三学期、体力的にも精神的にも落ち着いてきた頃――おそ松くんを陰から見守る余裕ができた頃。前の席から、プリントを後ろに配るとき。ちらりとおそ松くんを視界に捉えるのが条件反射のようになっていたけど、この時期からよくおそ松くんと目があうようになった。
最初は気のせいかと思って、平常を装ってニコリと笑ってその場をやり過ごしていた。でもそれが何度も続いて、次の席替えでも同じようなことが起きて。少し期待をしてしまった私は、目があったおそ松くんに、机の下から手を振ってみたことがある。
おそ松くんはパチクリと驚いてから、私を見つめた後、へらりと笑って手を振り返してくれたのだ。そんな些細なことがどれほど嬉しかったか、きっとおそ松くんは一生知らないだろう。どれほどかっていうと、おそ松くんの愚痴をこぼしまくるチョロ松くんにこの嬉しさを報告してしまった程度には、嬉しかったのだ。

目があって、手を振りあう。こんな些細な出来事に、私はどうしようもなく幸せになれた。


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