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同級生


恩返し


中学三年に上がってからの私は幸せの絶頂期にいたのかもしれない。
また三年に上がっても同じクラスになったおそ松くん。この時点で私は明日の死を覚悟したし、中学校生活最後の一年が最高のものになると信じて疑わなかった。

去年同様、推薦で学級委員を任された私に、担任の浜ちゃんは私を不憫に思ったのか、おそ松くんの去年の不良行為の抑制剤にしたかったのか、はたまた私の気持ちに気が付いているのか……おそ松くんを委員に指名した。
まさかの展開に心臓が付いて行かず、浮き足立った心のままにおそ松くんの隣に立っていた。嬉しさと緊張と驚きが同時に押し寄せてきて、とにかく、手が震えた。こんなに近くで話し合う機会なんて、なかったから。いつも私は、おそ松くんの後ろ姿ばかりを見ていたから。
控えめに「また一年間よろしくね、松野くん。」と声をかければ、おそ松くんは右手でいつもみたいに鼻の下をこすって、「よろしく」と眩しい笑顔で笑ってくれた。

緊張で全然うまく話なかった初めに比べて、随分とおそ松くんとお話ができるようになってきた頃。浜ちゃんの「遅いから送ってけ」の一言で、おそ松くんは委員会などで遅くなる日はいつも私の隣を歩いて一緒に帰ってくれるようになった。嬉しくて、ドキドキして、うまく言葉が出せないことの方が多かったと思う。私、ヒーローと一緒に話してるんだ。私と目を合わせて話をしてくれるおそ松くんを見つめながら、いつもどこか夢見心地だった。シャボン玉みたいにパチンと覚めてしまうかも、なんて考えるほど、幸福な時間だった。

帰り道ではいつも世間話をした。おそ松くんの兄弟の話とか(こう言うところ、チョロ松くんと一緒だ)、学校の話とか、休日何をしてるかとか。とりとめのない話ばっかり。それでも私はおそ松くんが何気なくつぶやいた会話もちゃんと覚えているし、おそ松くんの話が隣で聞けることが何よりも嬉しかった。

テスト期間後のことだ。結果を聞くと、「ほぼ赤点!逆にすごくね?」なんて能天気な返事が返ってきて、私が驚いてしまう。勉強は振るわないことは知ってたけど、本人がここまで気に留めてないのも、「なんとかなるでしょ」と言いながら毎回追試もギリギリなのを今回初めて知る。
ダメ元で「追試までの間、一緒に勉強とか、どうかな?」なんて聞いてみると、予想外にもOKの返事が返ってきた。嬉しすぎて「本当!?」なんて詰め寄ってしまった。興奮が抑えきれず、火照った頬を沈めるように両手で押さえる。
少しあっけにとられたおそ松くんを見ながら、控えめに頭を上げながら、よろしく、と精一杯の笑顔で笑った。

そのあと家に帰って、今までで一番張り切ってノートのまとめを始めたのは、もはや言うまでもない。


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