ハロウィンって、どう言うイベントだろう。
お化けに仮装する?ディズニーランドに行く?いたずらする?お菓子をもらう?
―――私にとってのハロウィンは、甘くて美味しいイベントだ。
「白石〜」
「なまえ」
ハロウィンパーティーにて。ゾンビの私と、オオカミ男の白石。仮想の力加減の差に、些か不服だ。白石が去年ミイラ男だったから、私はゾンビにしたのに。そんな理不尽な不満を抱えながら、それでも白石に会えた嬉しさから気分はむしろ上昇する。
「オオカミ男さん、オオカミ男さん。」
「はいはい、なんですかわいいゾンビさん。」
30センチ以上背が違う白石に向かって、満面の笑みで両手を出す。
去年も、一昨年も。私のお菓子好きを知る白石は毎年私にハロウィン用のお菓子を手作りで用意してくれるのだ。律儀で真面目な白石の事だ、きっと今年も私用のお菓子を持参しているだろうと踏んで、こうして足を運んで来たというわけだ。
「とりっくおあとりーと!」
それを聞いた白石は、にっこり笑った後、わざとらしく顎に手を添え、考える素振りを見せた。
「ンー、残念やな。
俺、今お菓子切らしとんねん。」
「えっ!!」
その言葉のあまりの衝撃に、目眩がする。白石はお菓子をくれると思ってたからだ。
「すまんなぁ、なまえ。
後でぎょーさん用意しといたるから、堪忍したってな。」
「うー……。白石の手作りお菓子、楽しみにしてたのに…。」
ぽんぽんと頭を撫でられて、少しだけ機嫌が直る。我ながら単純なヤツだ。
「じゃあじゃあ、いたずらだね!
バツとして、オオカミ男さんは私とハロウィンパーティーを一緒に楽しむこと!」
白石は私の頭の上に置いた手をどけると、少し驚いた顔をした後、吹き出した。
「あっはは!お易い御用やで。」
「わーい!」
嬉しくなって、白石の手を引いて歩き出した。白石と歩くと、白石のついでのようにお菓子がいっぱい貰えるのだ。(一緒にみんなして頭を撫でて行くけど)
いつの間にかにしっかりと絡まった指と、私用のお菓子をちゃんと用意していたと気づくのは、もう少し先のお話。
……それから、オサムちゃんにウイスキーボンボンを盛られてちゃっかり"送りオオカミ"をされたのも、もう少し後の話。
オオカミくんとゾンビちゃん
2015/10/31