「好きだよ、蘇芳。」
目の前の赤司君は、真剣な顔で私に語りかける。
私はどうしていいのかも知らず、ただ慌てふためくことに精一杯だ。
「え!!?急に、何」
「俺と付き合え。
ちなみに、拒否権は存在しない。」
「そそそそそんなこと急に言われても・・・!!」
「蘇芳」
途端、彼は優しい眼差しで迫ってきて・・・・・・
ぱち
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
赤い、綺麗な髪。
深い紅色の瞳。
間近にある、赤司君の顔。
次の瞬間には、涼しげな顔でニコリと微笑んだ。
「おはよう、蘇芳。」
「・・・k、んムッ!!!!」
「静かに。」
思わず叫びそうになった口を、赤司君の手によって思い切り塞がれる。
それでもやはり顔は近くて、息がかかる程度の距離しかない。
私はコクコクと小刻みに頷くと、彼はゆっくりと拘束を解いた。
先程から頬にかかる赤毛が妙にくすぐったくて顔を左に逸らすと、どうやら赤司君は私に覆いかぶさっていた状態だということがわかった。
そして私は、シーツのかけられたベッドの上。遠くの音は賑やかだ。ここは多分、保健室。
しばらく、心地いい沈黙が続いた。
「・・・返事は、いつでもいい。」
ぽつりと呟かれた赤司君の言葉に顔を向ければ、彼は少しだけ悲しそうな顔をしていた。
私がこんな顔をさせているんだと思ったら、無性に胸が苦しくなった。
そこで、やっと気がついた。
私は、赤司君を・・・。
もう友達とは、思ってはいないこと。
「赤司、君。」
彼の足に置いてある手を左手で重ねて、私は彼と向き合った。
「私・・・は、」
「赤司君のこと、」
赤司君のこと、何?
そのあとの言葉に詰まって、黙り込んでしまう。
彼はやっぱり悲しそうな目をしていて、何か言わなければ思っても口は開けなかった。
赤司君の口から、静かに言葉が漏れる。
「もう、いいよ。
すまない、友人にそんなこと言われても迷惑だな。」
そういう彼の顔が、
「・・・っ、」
辛そうで、
「違う!!」
口を開いていた。
「もう、赤司君は友達じゃない!」
「・・・・・・、」
「友達になんて・・・戻れない。」
進んでしまったこの気持ちを何と呼ぶのかはまだ、わからない。
「・・・少しは、脈あり・・・なのか。」
「・・・・・・わかんない、けど」
「・・・ふ・・・・・・」
「、わ、笑わないで!こっちは真剣なの!!」
「なら、友達以上の恋人以上にして見せるまでだ。」
戦術も戦略もない
二人はまだ、始まったばかり
No longer friend.
(もう、友達じゃない)(二人の関係)