贈り物 | ナノ
   キリ番お礼【礼様】
【金髪殺人鬼】





「アリサ−!」

バァン、なんて大きな音を立てながら遠慮もなく入ってきた男はそう、
世にも有名なAKY、アルフレッド様々だ。
誰かを確認するまでもない。
そして私の仕事を邪魔するな。



A(アルフレッド)K(空気)Y(よめ!!!)



「はぁー、まったくなんなの君は。
アルフ・・・・ギャーーーー!!!


「HAHAHAHAHA☆
どうだいこれ、イカしてるだろう!?」


「わかったからそんな物騒なもの振り回さないで!!

って、こっちくるなああああああああああああっ!!!!」


「アリサ!どうして逃げるんだい!?」


その手に持っているものを振り回しながら近づいてきたらいやでも逃げる。
ヴォオオオオン、という機会音と共にめまぐるしい勢いで回るのはごつごつしたチェーンの歯。
そう、チェーンソー。チェーンソーを振り回しているのだ、あの輩は!

心なしかこちらに迫ってくるアルフレッドの頭にかぶっているホッケーマスクが嘲笑うかのように歪んで見える。



「まてまてまて、ジェイソン・ホビーズはホッケーマスクはかぶっていてもチェーンソーは持ってなかった!!!
今すぐそのチェーンソーを下ろせ、私の家が破壊されるッ!!!」


「えー、そうなのかい!?
じゃぁなんでジェイソンはチェーンソーを持っているイメージがあるんだい?」


会話をしながらも生死の追いかけっこは続く。
物騒すぎる!!!


「知るかそんなもん!
ジェイソンはナタもってんの!!
チェーンソーはジェイソンに向けられる方なのーー!!!」


「君、やたら詳しいんだぞ・・・。
でもこっちの方がCOOLだからどうでもいいんだぞ☆」


「よーくーなーいー!・・・っわぁ!!!?」


部屋での追いかけっこも限界があった。
風呂上りだからとスリッパで行動していた私は、ついには床に伏せてしまう。

急いで後ろへ振り返りながら後ずさる。
ホッケーマスクでじりじり迫ってくるもんだから、本当に殺人鬼みたいだ。

ついには壁に背中を付いてしまった。
もう、逃げ場はない。

やばい・・・涙出てきた。




「もう逃げられないんだぞ、アリサ。」


「Jesus....!」


襲ってこないとわかっていても、思わず目をつぶる。

終わった!
私の人生終わった!ジーザス!!


「・・・・・・・・・。」


不意に止むバイクのアクセルを回したような機会音。
やっと懲りてくれたんだろうか・・・・。
よかった、間違ってチェーンソーあたってハロウィンの翌日に死体だったなんてごめん・・・


ダン




「ッ! いきなり何す・・・」


先ほどの音はアルフレッドが壁に手を付いたことによるものみたいだ。
文句を言おうと顔を上げると、いつの間にかにアルフレッドが目と鼻の先に。
鼻息がかかるほどのその距離に、ドキ、とする。
いつの間に、マスクを外したのだろうか。


「アリサ、」


「な、何・・・・・、!」


次の瞬間には私は暖かいアルフレッドの腕の中にいて、息を詰まらせる。


「悪かったんだぞ・・・その・・・・・
怖がらせたかったわけじゃないんだ。」


「アル・・・」


「ここんとこ、アリサ、ずっと働きづめだったし・・・・。
この機会にドッキリしようかと思って・・・それで・・・・

あぁ、もう!こんなの全ッ然、ヒーローらしくないんだぞ!!
かっこ悪いじゃないか・・・・・・・・うぅ・・・。」


そんな風に考えてくれていたのか。
ハロウィンだから、ちょっかいかけに来るだろうなと思って買っておいたチョコの包みがカサリと音を立てた。
自分もなんだかんだ言ってアルフレッドと話が出来ることを期待していたのかと思うと、苦笑いが漏れる。

この金髪殺人鬼な私のヒーローは、やることが不器用なのだ。
私はアルフレッドの腕の中から脱出し、再び顔がくっつきそうな距離になる。

申し訳なさそうなヒーローのおでこに自分の額をくっつけて、


「アルフレッド?
確かに驚いたし怖いとも思ったけど、
あなたのおかげで仕事の疲れも吹っ飛んだ。
ありがとうアルフレッド。」


「ほ、本当かい?
俺、アリサの役に立てたかい!?」


みるみると元気になっていくアルフレッドの表情に、自然と顔がほころぶ。


「立った立った。
おかげでやっと休憩が出来るよ。」


「DDDDDDD!!
しょうがないから、休憩中の相手をしてあげるんだぞ!」


「ふ・・・・はいはい、殺人鬼さん?」


「じゃぁアリサ、"trick or treat?"」


「ん〜、アルフレッド。
少しの間目を瞑ってて?」


「こうかい?ちょっとドキドキするんだぞ。」


素直に目を瞑ったアルフレッドに、ささやかな仕返しを。
私はパジャマの胸ポケットに入った丸くて小さなチョコレートの包みを広げ、中身を口に入れる。
アルフレッドのうなじの後ろに手を回し、口を紡ぐ。


「むぐっ!」


そして、驚いた反動で開いたアルフレッドの口の中にチョコを舌で押し込む。
途中ざらついた舌がこすれあい自分でも少し動揺した。
ゆっくりと口を離すと、アルフレッドは動揺大半、少し名残惜しげな顔をする。
部屋を荒らした仕返しだ。


「、ふふ、おいしかった?」


「〜〜アリサッ!」


「あはは、顔真っ赤。かわいい」


「うぐぐぐぐ・・・・・・このままじゃ、かっこつかないんだぞ・・・」


そういうとアルフレッドは私のパジャマの第2ボタンをあけ、
首筋に顔をうずめる。


「! ちょ、アル、やめ・・・・ふァ・・・ッ」


「仕返し、なんだぞ」


アルフレッドのざらついた舌が首筋を舐める。
言葉を紡ぎながらの行為でさらに吐息がかかり、拍車をかける。
何がとは言わないけど、言わないけど!


「ふぅ・・・、参ったかい?アリサ。」


「ま、参りました、アルフレッド様・・・。」


「はは、・・・・アリサ。

ハッピーハロウィン!」
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