贈り物 | ナノ
   15万打企画【紅火様】
【おねむりおうじ】




大好きな彼とのキスは心地良い。

いつだって蕩けるような気分になれる。
とってととっても幸せになれる。

だから私は臨也さんとのキスが大好きだ。





「沙羅ちゃんからキスしたことってないよね?」



屋上の排水タンクで横になっている臨也がボソリと呟いた。
ポリポリと食べていたポッキーが沙羅の手から地面へ落ちる。



「えっ……そ、それは…その…」



動揺する自分。
だが、それとは別にお菓子が勿体無いという冷静な考えをする自分。

思わず落ちたポッキーを手に取る。



「……」

「……」



気まずい沈黙が暫く続く。

沙羅から臨也にキス出来ない理由。
それは、ただ単に『恥ずかしいから』という至ってシンプルな理由だった。



「…でもまあ、たまには沙羅ちゃんからキスしてほしいなぁ」



身体を起こし、顔だけひょいっと沙羅の方を見る。
ニコニコと笑って本当に考えている事が何か全く分からない彼に沙羅は「恥ずかしいから絶対無理です!」と答えた。









 後日


久しぶりに臨也の自宅へやってきた沙羅。
臨也から渡された合鍵で扉を開け、中に入るとソファーで無防備に眠っている臨也の姿があった。



「(…寝てるなんて珍しいなぁ……)」



余程疲れているのか、普段ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている口元は他の同年代の少年たちと全く変わらない。

沙羅はとりあえず眠っている臨也の身体に毛布をかけた。
しかし臨也が目覚める気配はない。



「……」



――でもまあ、たまには沙羅ちゃんからキスしてほしいなぁ――



数日前に臨也に言われた言葉が脳裏に蘇る。



「(今なら…しても気付かれないよね…?)」



沙羅はゆっくりと臨也の唇に自分の唇を重ねた。
重ねたというよりも触れたと表現した方が正しいのかもしれない。



「ッ…あーもう無理!」



沙羅はすぐに唇を離し臨也の家から飛び出した。
恥ずかしくていたたまれなくなり、この場から消えたくなったのだ。

そして、部屋には臨也一人がポツンと残る。



「…ふふっ」



臨也は笑いながらゆっくりと起き上がる。



「まぁ…恥ずかしがり屋の沙羅ちゃんにしては頑張った方だよねぇ」



実は臨也は最初から起きていたのだ。
この場に双子の妹たちがいたのなら「悪趣味」と呆れ、この事を沙羅へ報告しただろう。



「でも、次は俺が起きてる時にしてね?」



まるで沙羅がその場にいるかのように臨也は呟いた。






おねむりおうじ



(〜♪)

(あれ、イザ兄なんか機嫌よくない?)
(同……(確かに))



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