現代トリップしたかったんだけどどうしてこうなった

少しでも朔聖の可能性を生み出して見たかった。
朔が好きです。


はっぴばーすでーとぅーゆー

どこからか、陽気な歌が聞こえてきた。
俺は、それどころじゃない。
助けてくれるとありがたいのだが。

「逃げなくていいよ、聖」
「いや逃げるからな普通そんなクソでかい包丁持ってる奴が目の前にいたら逃げるからな俺じゃなくても逃げるからな」
「央は逃げないけど」
「あいつは異常なの!!」
朔溺愛の央と比べられるとはたまったもんじゃない。ふざけるのも大概にしろ。俺はあいつほどお前のためにかける命なんて無いし、今日は千代と会う約束があったのだ。待ち合わせまであと1時間。場所が遠いため車で今出発しなければ間に合わない。
チッと朔は舌打ちをすると、陽気にはっぴばーすでーとぅーゆーと歌い出した。
そう、最初の歌声の主はこいつだ。
ついでに言おう。俺の誕生日は半年前に終わったもしくは半年後にある。
「なあ朔、今日は千代と会う約束があってだな」
「それが?」
「は?」
「僕には関係ない」
「俺には関係あるから!!ふざけんなよお前!!」
「僕は大真面目だ」
「ダメだこいつめんどくせぇ!!」
トン、と壁にかかとが当たった。
俺は勘付いた。
これは俺の死亡フラグだ、成る程。
「もう逃げられないね、聖」
そんなこたお前に言われなくてもわかってるよ。
どうするべきだ…そうだ、央だ!
朔がここにいるということは央も何処かに待機してるということだろう!
「央!居るんだろう!」
返事は無い。
「あとで朔の小さい頃の写真まとめたアルバムあげる」
「お呼びでしょうか聖様」
ベランダの戸をガラッと開けて、凛々しい姿の央が仁王立ちをしていた。なにこの無駄なイケメン可哀想になってきた涙でそう。
「央、僕らの邪魔をしないで貰えないか」
朔の冷たい視線が央を突き刺す。央は圧倒され半歩下がったが、朔のアルバム…と呟き気を持ち直した。
「央、今ここで退散してくれたら後でたくさん構ってあげるよ」
「聖ごめん帰るね!」
央は綺麗なウィンクを決めてベランダから去って行った。
……………。
「央ああああああああ」
「ほら、邪魔者はいなくなったよ、聖」
「央後で殴る絶対殴る」
「ねえ目の前に僕が居るのに他の男の名前呼ぶのやめて欲しいんだけど」
「お前は俺の彼氏か!!」
「そうだけど」
「そこは否定しろよバカ!!」
ツッコミつかれた。もうやめてくれ。千代に会いに行きたい。
あのなそうやって朔が俺に気味の悪い好意を向けてくるから俺は央に嫌がらせされるし千代にはいろいろ勘違いされて何度氷漬けにされたと思ってるんだ。お前ら思いが一方通行すぎるんだよ他にも道作れよ交通状況良くなるから。
ダンッと両側から音がした。
「年齢の割りに、童顔だよね」
なるほど。これが壁ドンというやつかなるほど。俺はやられるよりやる側になりたかった。助けて千代。
朔はじぃっと俺の顔を覗き込む。やめてくれ恥ずかしいから。
「見るな」
ふいっとそっぽを向く。向いた俺が間違いだった。
「っ…!!」
べろりと耳を舐め上げられた。ぞわぞわと気味の悪い感覚が背中から走る。気持ち悪い。
ひやりとした鋭いものが喉元に当てられる。動くなってことですかそうですか。
ぐちゅぐちゅと耳を犯される。ダイレクトに聞こえる水音に俺は軽い恐怖を抱く。唇を強く噛んだ。そうしなければその恐怖からは逃れられないと思ったのだ。
「ほら、噛むな。血が出るぞ」
朔が俺の顔を両手出つつみ、無理やり自分に向き合わせた。
あ、俺この後にすること予想できる。
「っふ…っ!」
食われた。どこを?口を。キスなんてそんな色気のあるものと一緒にすんなよ、こいつ今本当に食ってるからな。朔の歯痛いんだけどお前自分の歯削ってんの?鮫に憧れ持ってんの?唇噛むよりお前に食われた方が血出るから。これにもう慣れてしまった自分がいるのが少々気に食わない。
ってか朔、壁に包丁刺してるのかふざけんなよ、大家に怒られるの俺なんだからな。
「ほら口開けてって」
今口内炎できてるから遠慮させてください。央の口でも掘ってください。
あとこれは切実な願いです。
初ディープキスくらいは千代とさせてくださいお願いします。
「開けてって言ってるよね」
グッと首に強く、包丁が押し付けられた。あ、口開けないと俺ここで首落とされる、死ぬ。
恐る恐ると口を開くと、朔が捕食にかかった。
さよなら、俺の初ディープ…。
と呑気にそんなことを考えていると、ビリビリとした感覚がして肩が跳ねた。
「あ、口内炎みっけ」
「っやめっ……っ!!」
口内炎をしつこく攻め立てる。痛い、尋常じゃない位痛い。腕から背中から、妙な電流が走るような感覚が酷く気持ち悪い。痛い。視界が滲み始め、喉多くから嗚咽する声が漏れる。今日は最悪だ。
「泣いてるの?」
「痛いんだよ、バカ…!」
「口内炎の薬持ってきたよ」
朔が肩にかけていたバッグから小さな薬を取り出す。待って、それ俺の知ってる口内炎の薬じゃない、口内炎の薬って塗り薬だろう、少なくとも病院でもらったのはそうだ。
「…一応聞くが、朔。それはなんだ」
「媚薬に決まってるでしょう」
「さっき口内炎の薬とか言ってただろう!」
「聖って疑い深いからもう正直に言った方が楽かなと」
ダメだこいつ。なんで俺の周りには可哀想になってくるイケメンしかいないの…あ、本当に涙出てきた。
「泣かないで。この薬は怖くないよ、大丈夫」
薬が怖いわけじゃなくてお前が残念すぎて泣いてるんだバカ…!!黙ってれば彼女なんてホイホイできるんだろうお前、なんでそこで俺を選んだんだ…。
「ほら聖、口開けて」
もう、どうにでもなればいいとおもう。ごめん千代、今日行けないや。
素直に口を開ける。
朔に口移しでそれを飲まされ、飲み込んだ瞬間に、



私は目を覚ました。
「…?!」
見覚えのある天井、畳の匂い。
あ、あぁ…私は夢をみていたのだな。今思えば可笑しな事ばかりだった。
色とりどりの小物が置いてあって…見慣れないものがたくさんあった…車とはなんぞや。
一体なんだったのだろうか。不思議な夢だった。
私があれほど荒い言葉を使うなどありえぬ。そして、朔が私などに興味を示すわけがないのだ。私は妖怪を滅するのがあまり好きではないため、極力は避けている。加え妖怪と交際する仲にあるのだ。朔は私を軽蔑の目で見ているだろう。
ついでに言おう。私は朔が嫌いだ。
私は、朔が、嫌いだ。
だから、夢のようなことはるはずがないのだ。朔には央がいる。そうだ。ははは。

「ははは」
「楽しそうだね、聖」
足の方にある程度の重みがある。そしてそれはするすると私の首元へと指を滑らせた。

ち ょ っ と 待 て


「夢の続き、しようか?」


千代へ
私の亡骸を拾ってくれ。









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