リボンを結んで戦闘態勢04

「ジョディ…!」
「名前?!どうしてここに…」
「赤井さん…赤井さんは生きてるの…?」

乱れる呼吸を整えながら、恐る恐るジョディへと質問をした。ジョディはわたしの両肩をそっと掴んで目線を合わせると、落ち着いてと声を掛ける。

「秀なら無事よ。さっき、本部に帰ってきたわ」
「そ…、っかぁ……」

へたりと、その場にしゃがみ込んだ。全身の力が抜けて、まぶたに浮かぶ彼の顔が私の涙腺を緩める。

「なんでこんなところにお前がいるんだ」

ここまで私を全力疾走させた原因である、赤井さんの声が耳に届いて顔を上げた。右上70度を見ると、そこには普段と変わらない表情を浮かべる赤井さんがいて、漸く彼の身の無事を確認できた私。ほっと息を吐いて彼の前に立てば、赤井さんは今までに見たことのないような優しい表情で私を見下ろした。

「名前…お前はまだ、やれる。俺の分まで頑張ってくれ」
「…言われなくたって、そのつもりです」

複雑に混ざった感情を、全部全部、飲み込んだ。赤井さんが笑ったとき、切ない顔を浮かべていたのになんて気付いてない。そう、私はまだまだこれからあの組織で頑張っていかなきゃならないのだ。
赤井さんの大きく、ゴツゴツとした左手に、わたしの左手が握られた。彼のその大きな手から、これからの生活への勇気と希望を与えてもらえたような気がして、私はそこで初めて彼の前で笑うことができたような気がした。

「私、絶対奴らを潰してみせますから」


* * * *


「煙草、消してくださいよ」
「嫌なら出ていけばいいじゃない」

そう言ってふぅっと煙を吐き出し、再び煙草を咥えた。どさり。ベッドが少し沈んだと思って原因を目でたどると、それは彼の片膝が私の腰の辺りに置かれたせいで。彼の手がそっと私の煙草を奪ってローテーブルに置いてあった灰皿へと押し付けた。

「咥えてたら、キス…できないじゃないですか」

近づいてきた彼の顔を、そっと受け入れた。唇から伝わる私の煙草の味は、きっと、彼にとっては苦すぎる味だったと思う。
赤井さんへの気持ちを無理矢理に断ち切って、私を好きだと言った彼に縋った。私にかかったノックの疑いを晴らしてくれたバーボン。どんな時も私を守ろうとしてくれる彼を好きになるのに、そう時間はかからないような気がした。



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2016.05.28

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