こんな夜に貴方はどこへ行くというの

「毛利先生、コナンくん。お待たせ致しました」
「悪いな、安室」
「ありがとう!安室のにーちゃん!」

ポアロのバイトが18時までだった安室。仕事を上がって開いた携帯に、毛利小五郎から「蘭がいなくて飯を作る人がいないからコナンと自分の分の夕飯を作ってくれないか」というメールが入っているのを見て、ポアロで作ったパスタを持って2階の毛利探偵事務所を訪れてた。

「今日は蘭さん、お出かけなんですか?」
「それがまだ上にいるんだが、何処に行くか吐かねーんだよ。夕飯は自分たちでどうにかしろって言って3人で部屋に籠っちまってな…」
「なるほど…だから上が賑やかなんですね」
「ったく、女子高生ってのはよくわかんねーぜ…」

さきほどからキャーキャーと楽しそうな声が聞こえていたが、どうやらそれは蘭と蘭の友達の声らしい。名前が知り合いの女子高生と女子会、と言っていたが、蘭や園子のことを指しているのではなかったのだろうか。もしくは名前も上に居るのだろうか。そんなことを考えながら小五郎やコナンと世間話をしていると、階段をドタドタと降りてくる音が聞こえて、バタンッ!と、勢いよく事務所のドアが開き、そちらに目を向ける。

「毛利さん!た、たすけてください!!」
「ちょっと!名前さん!」
「名前さん!おじ様に余計なこと言っちゃダメよ!!!」

目に入ったのは女子高生3人。だが、安室はそのうちの1人、小五郎に助けを求めた女を見て首をかしげる。ーーこの雰囲気…。もしかして…

「お、おい…まさかそれ……名前ちゃんか…?」
「「え」」

小五郎に続いて、声を上げる安室とコナン。確かに声も雰囲気も彼女だ。しかし、普段全くと言っていいほど化粧をしない名前が、今はチークでほっぺたをピンクに染め、まつ毛もいつも以上に上向きにくるんっと向いて、グロスのついた唇がぷるんっとしている。
ーー別人だ。
若々しい化粧の彼女には、普段の大人びた面影はなく、そこらへんの女子高生そのものである。泣きそうな顔をしている名前と、ドア付近で名前が余計なことを言わないか内心冷や汗をかいている園子と蘭。合コンに行くなんて言ったら止められるのは目に見えているので、園子は絶対に小五郎に言うな!と、名前に念を押していたのだが、名前は今にでも「2人にこんな格好させられて合コンに連れて行かれそうなんです!」と言ってしまいそうな勢いである。

「そうです!名前です!毛利さん、助けてください…!2人が私を合コ「さあ名前さん!そろそろ行くわよ!」
「じゃ、じゃあね!お父さん!」
「ちょ、蘭ちゃん!園子ちゃん!離しなさい!」

見兼ねた園子と蘭が名前を強引に引きずる形で事務所を出て行く。ドアが閉まる音とともに静かになった事務所。安室がいることに気付く暇もなく出て行った彼女の制服姿と、涙目になっている姿を思い出し、安室は暫く右手を顎に当てて考えた。
ーーあれが名前?…何故制服を?………合コ…?合コ……!…まさか!
安室が何かに閃いて、はっ!とした時、隣に居たコナンも同じ顔をしていた。2人は勢いよく事務所の扉を開き、階段を駆け下りる。取り残された小五郎は、なんだ?という顔をした後、冷蔵庫へとビールを取りに行き、呑気にパスタを食べ始めた。


*  *  *  *


「…遅かったか……」

階段を降り、キョロキョロと辺りを見渡すも、あの3人らしき人物の影は見当たらず、ハァと、ため息をつく。隣のコナンも同じタイミングで息を吐いて肩を落とした。

「名前さん、本当に女子高生みたいだったね…」
「あぁ。まさかとは思ったけど…合コン、かぁ…」
「(…絶対に言い出しっぺは園子だな……)」

安室はコナンに、ちょっと待ってて、といってポアロに戻り、30秒ほどで荷物を持って出てきた。

「さあコナン君。僕は名前を探しに行くけど、君も一緒に来るかい?」
「え…」
「あんな格好をした彼女を、狼達の檻の中に放り込むなんてマネ、させたくないからね…」
「お、狼?!ぼくもいく!!」

意気投合した2人は足早に安室の車に乗り込んで、夜の米花町へ繰り出した。


* * * *


「ちょっと名前さん!叔父様には内緒って言ったじゃない!」
「私はあなた達の浮気に付き合ってられるほど暇じゃないのよ!女子高生なんだから合コンなんてしてないで純粋な恋愛しなさい!」
「う、浮気って…!」
「名前さんが26にもなって彼氏いないから私たちが出会いの場を設けてあげたんじゃないの!」
「頼んでないし!年下にもコスプレにも興味ない!」

余計なお世話だわ。と、思いながら両隣の現役女子高生を睨む。どうやら合コンの相手は園子が米花大学のオープンキャンパスで知り合った大学生らしい。高校生との合コンをセッティングしてくれと頼まれ、本当は世良が行くはずだったところを世良の制服を着せた名前を連れて行く、というアホな考えに至ったようだ。園子曰く、年上の名前さんがいた方が何かと安心だし〜との事らしい。私の彼氏の心配よりそっちがメインで私を呼んだのだろう。全く。なんて薄情なお嬢様だ。

「おっ!園子ちゃーん!こっちこっちー!」
「あっ、こんばんは〜!」

いつの間にか待ち合わせ場所に着いたようで、相手の大学生達であろう3人に、可愛い声を出す園子。

「まっ、名前さんも今日は全部忘れて高校生になりきっちゃいなさい!パーっとカラオケ合コン楽しみましょ!」
「…はぁ……」

園子ちゃんに圧倒された私はもう言い返す気力も残っていなかったので、しょうがない、カラオケくらい付き合ってやろう。と、園子と蘭に続いて相手の大学生達のいるところへ近づいて行った。
こんな事になるなら安室さんにお迎え頼めばよかったわ。



16.こんな夜に貴方はどこへ行くというの
title by ジャベリン
2016.02.01

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