バーボンさんと任務ミス

※軽い性描写を含みます。苦手な方はブラウザバックしてください。







夜空に浮かぶ光の如く、ターゲットの口許が怪しく三日月を描いた。背中を嫌な汗がツーっと流れる感覚に鳥肌が立つ。この後キャンティの餌食になる予定だ、コイツの末路はどうでもいい。

『任務は完了だ。ズラかるぞ、バーボン』

耳元で鳴った捕らえるべき男の声にさえびくりと反応する身体。1番恐れていた報復に酷く動揺した。耐性はもちろんあるはずだが、随分と強力な薬を選んでくれた。
こんな場所を組織の誰かに見られたら溜まったものではない、エレベーターを待つ時間すら惜しく階段を登って目当ての部屋を目指した。天地がひっくり返った世界で、小さな足音が近づいてくる。

「安室さん?」
「、名前……?」

何故こんな場所になんてもっともな疑問が浮かんでくる余裕すらない。身体はもう堕ちるところまで堕ち始めている。この子には1番見られたくない現場だった。

「ひどい汗…どこか具合が、」
「っ、触るなッ!ほっといて、く、れ」

少女の手が頬に触れた瞬間、この数分で1番大きな快楽の波が襲った。立っていることすらままならず、背中を壁に預けて天を仰ぐ。普段とはかけ離れた荒い声に驚いた少女が一度後退りしたが、今日はそれでも怯まない。

「誰か呼びますかっ、それとも…」
「、頼むからっ、かえって…ッ」
「ひとまずお部屋の番号教えてください。そこまで頑張りましょう?」

普段なら昇天してしまうほど嬉しい彼女のボディタッチも、今は本当に体に毒だ。触られた部分が異常な熱を放っているし、吐く息も間隔が狭くなってきている。情けない話、名前に身体を触られ、2.3度果てた。全身が性感帯に成り下がっている。

長居を避ける組織だ、ジンがまだここにいるとは考えにくいが、奴等の息がかかったこの場所から少女を遠ざけなくては。一握りだけ残った理性は少女を抱き上げ、階段を蛇行しながら駆け上がる。少女の制止すら、頭の中に入らない。



「ん、っ…ふ、ぁ やァッ、あむろさ、ん…っ」
「名前…名前……」

ホテルの1室に入るなり、少女の身体をドアへと張り付けて唇を奪った。息すらさせないような口づけが今なお続き、必死に酸素を求める舌を追い求める。自分の身体の一点は荒ぶる熱を抑える術を見失っていた。

「ど…ッ、したん、ですかッ…!ひゃっ、」
「ぁ。はっ、あぁ…く、っそ」

剥き出しの白い首筋に舌を這わせれば、少女の身体が面白いほどびくりと跳ね上がる。止めようにも力が入らない両手を頭の上で1つにすればいよいよ身動きが取れずに怯えが浮かんだ。申し訳ないが、この状況下でそんな顔をされても煽りを促すだけだった。少女の舌に触れるだけで意識が遠のきそうになる。

「あむ、ろさん…っ、あ、あの人を呼びます、よ…」
「はっ…そんな余裕、あるんですかッ」
「ねぇ、ほんと、に、んっ…!どうしたんですか…ッ、ゃんっ、」

毎回会うたびに力づくで抱き寄せたい衝動を堪えていたし、一度口付けて仕舞えばそれを優しく済ませるなんてことはできなかった。それくらいこの少女には中毒性があるし、触れただけでも甘い刺激で脳髄が痺れて泣きたくなる。
薬によって浮かんだ自身の涙が少女の頬を濡らす。名前の羞恥の涙とそれが混ざって光って、美しいほどに官能的だった。

「横になりましょう?お薬も、買ってきますから」

そのおくすりにやられてるんだよ。本格的に体調を心配されているし、自分が酷いことをされている自覚がない上、これが熱からくる異常行動だと思っている。この子の純粋さは、毎度鋭い刃となって己に降りかかってくる。

それにしても自分の右手は少女の細い身体のラインを撫で続ける。拒む両手が肩に触れると、何度目かもわからない絶頂が迎えにきた。目の前がチカチカして少女の首に頭を埋めれば少女もピタリとドアに凭れる気配を感じた。

「すみません…名前さん。少々自我を見失っていました」
「……っ、ん、……」

取り戻し始めた自制心で少女の頬を謝罪の意で撫でれば、涙を浮かべながらこちらを睨んでいる。

「バーボンさんなんてきらい…」
「ははっ……、顔、真っ赤」
「はんせいしてくださいっ」

ひとまず渋る少女をベッドに寝かせてシャワーを浴びなくては。下半身はとんでもないことになっているし、どうにか信頼を取り戻さないと二度と会ってくれなくなりそうだ。逃げられても困るので一緒にシャワーに入るか聞いたら思いっきり枕を投げられた。本気で心配したのにと怒っているのでとりあえず感謝のキスを額に落としてシャワールームへ向かった。

「…危なかったな……」

ケーキバイキングに来たというあの愛しい少女を犯す前に、欲望をやり過ごした自分は本当に褒め称えたい。

部屋に戻ると天使が眠っているはずだったベッドはもぬけの殻で、代わりに頭の切れすぎる少年からメールが届いていた。しっかりしてよゼロの兄ちゃん。確かにその通りだし、あの子は当分少女と自分を近付かせてくれやしない。

「どっちも一筋縄ではいかないな」

本当はもう暫く少女の心地よい体温に浸っていたかった。手繰り寄せた布団から少女のシャンプーの匂いが香った気がした。ひとまず、赤井抹消のためにあの薬は是が非でも入手しておく必要がある。少年には2人だけの秘密にしてくれと返信した。

2019.06.18
バーボンさんと任務ミス

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