「あ、そこのスーパーに寄って帰りましょう」
「…了解」
安室さんに言われたスーパーに入り、一緒に買い物をしてから家に着く。その時彼の口から出た"ただいま"という言葉に私の眉があんたの家じゃないでしょう、と言わんばかりに動いたのを見て、安室さんは苦笑いを溢していた。まあご飯を作ってくれるし、その間にお風呂に入っていて構わないと言ってくれたので、今回は大目に見ることとしよう。
この1週間で慣れたといえば慣れたのだが、今までずっと1人暮らしだったからか、部屋に他の人間がいる感覚に中々馴染めず、私の身体はかなり疲労を訴えていた。安室さんは警察の私を四六時中監視できるわけがないので、私が仕事をしている間は探偵をしたり喫茶店でアルバイトをしているようだった。
ーーこれでは監視というより同棲じゃないか。
明日は彼がこの家に来てから初めての非番。ようやく彼について調べることができる。何か面白い情報が出て来ればいいのだが。お湯に浸かりながら、ぼんやりとそんなことを考えているうちにうとうとし始めてしまった彼女は、湯船の中でゆっくりと目を閉じてしまった。
* * * *
彼女がお風呂に入ってから1時間半が経過した。この1週間の観察からして、そんなに長湯をするタイプではない彼女がこんなに風呂に籠るなんて。まさか溺れているなんてことは...。作った料理はすっかり湯気も消え、美味しさが半減してしまったような見た目に変わってしまった。これでは僕の自信作も台無しだ。
それからまた30分が過ぎ、安室は居ても立っても居られなくなった。
ーー脱衣所から声をかけるくらいならいいだろう。
タイミングによっては怒られるのを覚悟でリビングのドアに手をかけた刹那。ガチャッと、そのドア がこちらに向かって開き、安室の目に、ビックリした様子の名前が飛び込む。
「あっ…ごめんなさい。少し寝ちゃって…」
髪の毛を滴らせ、胸元がちらっと見えるほどラフな格好。長く風呂に浸かってたからなのか、頬を紅潮させ、うるっとした瞳の彼女は、眉を下げながら僕を上目遣いで見上げている。
ーーこれは不意打ちだ。
普段、仕事から帰ってきたらすぐにご飯を食べて、そのあとお風呂に入る彼女の部屋着姿を見るのはこの日が初めてだった。安室はそんな彼女に暫し見惚れていたが「お腹空いたー…」という彼女の間の抜けた声で我に返り、いつも通りの笑みを浮かべて「もう出来てますよ」と言いながら、自分より先に食卓へ向かった彼女の後に続いて戻ろうとした。ーーその時だった。バタンッ!という音とともに目の前の彼女の身体が、まるでスローモーションのように傾き、安室の視界からフェードアウトした。床に横たわる彼女。安室は我を忘れて、彼女の身体に駆け寄った。
「名前!…名前!!」
*
6.君はどうやって星を見るんだろう
title by 金星
2016.01.27
安室さんは夢主が風呂に入ってる間は自分の部屋にいて、夢主が自分の部屋に入る音を聞いてから風呂に入ってるって設定。
おやすみなさいは基本言わないし、一緒にテレビを観ることもなかった最初の1週間。
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