ツースリーな彼女


 おれとあいつはツーカーなんだぜ!!

「そーでもねェだろ」
「エースお前ツーカーって言いたいだけだろ」
「まあまあ、エースもそういう年頃ってこった」

 どいつもこいつも失礼だな。おれが羨ましいからって僻むなよなー。盗人猛々しいやつらばっかで困るぜ。

「や、それ使い方まったく違う」
「どうせツーカーの意味もわかってねェんだろ」
「うっせ!わかってるっての!!」

 おれのこと馬鹿にしやがって。ツーカーってあれだろ………………まァ、あれだ。ツーでカーだよな。おう、そうだ。

「ツーでカーだよな、ナマエ!」
「え、なに?うんそーかも」
「お前いま適当に言っただろ」
「気のせい気のせい」

 両手を空に突き上げて体を右へ左へ倒す。顔はあくびのせいでしわくちゃになっちまって、おれは眉間に寄った皺を人差し指で伸ばしてやる。フィギュアヘッドはナマエお気に入りの昼寝スポットだ。

「ズリィぞひとりだけ」
「誘おうと思ったんだけど」

 誘惑に負けたー、と背中をまたクジラの頭に預けた。

「エース」

 目を瞑り、瞼越しの光が眩しいのかまた眉間に皺を寄せておれを呼んだ。意識は半分くらい持っていかれちまってるらしい。隣のスペースにおれも背中を預けた。背中にぶら下がっていた帽子をナマエの日除け役にさせて。

 昼間の太陽ってのはどうしてこう眠くさせるんだ。瞼を閉じれば催眠術にかかったみてェに意識を持っていかれちまう。あーきっと目ェ覚めたら飯の時間だな、サッチのやつ今日はなに作んだろうな。やっぱ肉ははずせねェよな。

「魚がいいな、タコとか」

 ナマエを見るとおれの帽子を顔に乗せたままで、きっとその瞼も閉じたままで、意識なんて半分なくて、おれは声に出していないわけで。

「タコは魚じゃねェだろ」

 とりあえず間違いを指摘してみたりして。

「海のいきものでしょ」

 なんだそりゃ、と笑ってみたりして。

「ツーカーなんてもんじゃねェな」

 面白くて嬉しくて、持っていかれた意識が戻って来ちまった。

「つーすりー」
「ん?」
「わんつーすりーふぉー。カーっていくつよ」
「はは、ちげェよ」

 じゃあなに、と聞き返すナマエはおれと違ってほとんど意識を持っていかれているらしい。なんでおれがいきなり数字なんか口にすんだよ、しかも数え間違うとかそこまで馬鹿じゃねェっての。でもカーってなんだ。ツーはツーだよな。

 なんでもいいからツーカーだと言ってやろうと体を寄せれば微かな寝息が聞こえる。ああ、とうとう全部太陽に持っていかれちまったのか。片腕を腰にまわすと感じる微弱な上下運動に、再びおれの意識も薄らいでいく。

「ま、ツースリーでもいいか」

 とりあえず、おれとお前の関係だってことはナマエに説明してやろうと思う。ツースリーだったら夢ん中でも通じんのかな。


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2011.0310
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