連載プロローグ風 その3
パシャッ
「ご当選おめでとうございます!」
強烈な光を浴びて目の前が白くなった。
ゆっくりと瞼を上げれば黒い物体がふたつ。
ふわふわした思考のまま、落ち着いた口調で話される言葉に、ただただ曖昧な相槌を打っていた。
「ドンキホーテ・ドフラミンゴ様ですね」
「……誰だ」
タキシード姿の男と、手に小ぶりのカメラを握っている男。
見覚えのない輩に片眉がピクリと動く。
左右の視界を確認するが、この空間が先ほどまで寛いでいた自室ではない事は明白だった。
「おめでとうございます。貴方様は一週間の異世界旅行にご当選なさいました。私どもはその手続きに参りました」
「あん?」
異世界と言う単語に引っ掛かりを覚えるが、まず、この男がツアー旅行などに応募することはあり得ない。
「くまの差し金か?」
心当たりと言えば、たまの招集で顔を見る男の能力。しかし、あれはあいつが触れなければ飛ばせないはずだ、と可能性を消す。
では一体――
「私どものことはお気になさらず。すべてを理解する時間も必要もございません。貴方様はこれから一週間、今の世界とは別の世界へ旅行に行かれるのです。今の世界とは文明も世相もたいへん異なる世界ですので、少々退屈な今の生活に刺激を与えられることでしょう」
「その話、あんまり美味そうな匂いがしねェなァ」
「貴方様はただ純粋に、この旅行を楽しんでいただければ結構です」
サングラス越しに睨みつければ、ふふふ、と品の良い笑いが返ってくる。
「そうですね、これからのことは、一つの長い夢と思って頂いて結構です」
「…………一週間経ったら戻ってこれるんだな?」
主導権は絶対的に目の前の男たちにある。
幾多のビジネスをこなしてきた経験から、これは交渉や取り引きといった温いものではないことを感じ取る。本来他人の言いなりになるのは気に食わないが、今の男には切り返す術がない。
ならばお望み通り思う存分楽しんでやろうじゃないか、と思考を止めた。
「ご安心を。では、これからあちらの世界でのパートナーのご紹介を――」
一枚の写真が手渡され、名前と少しばかりの特徴が伝えられた。
何をしろという指示も無く「お楽しみください」という言葉を残して男たちは消えた。
サイト開設前から作り始めてたのに未だに形にならない子。
ドフラじゃなければ進むかなァ…
2010.1208~1213