おれ達、どんな船長でも…! その後の2


 あの日から船長達に監視をつけ始めたおれ達。言いだしたのはおれだから、厄介な時間帯を引き受けるのも当然のことだと思う。
 たとえばそう、朝食の時間とか――



「船長おはよ。最近早起きだね」

 朝食のために護衛も兼ねておれ達は一緒に食堂に向かう。で、だいたい船長に会う。あれ以来、こいつの言うとおり船長は早起きになった。

「ああ、ベポぐるみを着たお前が見たくてな」

 その理由はすんごくくだらないものだったけど。うん、でも早起きって良いことだよな。うん。

「そうなの? でもあれもう着てないんだ」
「なにっ! どういうことだ!?」
「ペンギンが着ちゃダメっていうから」
「ちょ、それ船長に言うなって言っただろ」
「ペンギンどういうつもりだ」
「アレ着てたら絶対あんた襲うでしょうが!!」
「ふざけんな! アレを着てなくてもおれは襲う!!」

 これでもおれ達クルーが憧れている船長なんだよな……。

 あぁそう、あれ以来船長は早起きになった。その理由は今はっきりしたわけだけど。凄くくだらない理由だったけど、口には出せない。
 最初は、起こしに行くという恐怖から逃れられたと思ったおれ達。でも次の瞬間、寝ぼけた振りをしてあいつに襲いかかろうとする船長を見て、ああ船長の寝起きから見張っとかなければいけないのか、と朝から項垂れたもんだ。
 ちなみに言っとくと、ベポぐるみはおれのタンスに仕舞ってある。船長がいない時だけ着ても良いぞって言ってある。……そんな時無いけど。

「おいペンギン、おれを無視して考え事とはいい度胸じゃねェか」
「いや、船長のこと考えてたんで」
「なんだ気持ち悪い」
「ひどっ!!」
「ペンギンも船長も、いいから朝ごはん食べようよ」
「そうだな。今日はおれがお前に『あーん』をしてやる」
「切り替え早っ!! てかまだひきずってんすかそれ!」
「んー『あーん』もダメってペンギンに言われてるから」
「…………」

 あーあ―これが俗に言う無言の圧力ってやつだよね。なにこれ、目からビームだよ。殺気という名のビームだよ。今の船長ならこのビームでおれのこと貫けるよ絶対。

「ペンギン」
「はい」
「お前はなんだ」「え?」
「お前は何なんだと言ってるんだ」
「なんなんだって……」
「おれは船長だ。お前はいちクルーだろう」
「そうですね」
「なんでこいつはお前の言うことを聞いてんだ」
「え、」
「なんでおれの『あーん』はダメでお前の『あーん』禁止は良いんだ」
「だから! 『あーん』引きずりすぎだってばあんた!」

「はい、あーん」
「おーいしー! じゃあじゃあ、はい、ベポもあーん」

 あーもう、なんでこういう時に船長ん目の前でそういうことするのかな君達は!!

「……ペンギン、どういうことだ」
「さ、さァ……」
「ペンギン、船長にはダメって言ってたから」



 ああなんかもう冷や汗で脱水症になりそうおれ。 


2010.1128~1208
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