真ちゃんに芳香剤を投げつけた後、居た堪れなくてその場を逃げ出した私は和成を探すのに会場中を走り回った。

全国大会、と言っても秀徳高校バスケ部の部活ジャージは色の関係上とても目立つので、すぐに部員を見つけられた。部員に和成の居場所を聞き、あっさりと私は彼のもとへとたどり着くことができた。


「和成、和成いいいいいい!!!」
「なっナマエ!?何でここに、ってか何で泣いてんの!!」
「真ちゃんが!」


周囲の部員の目もあり、私は和成に外の自販機へ連れ出された。そこで事のいきさつを全て、言葉に詰まりながらも説明する。


「あー、それで投げつけて帰って来たのか」


飽きれたような、真ちゃんに同情したような、どちらとも取れる声で和成がポツリと呟く。普段の彼なら、投げつけるって、と爆笑しそうなものだけれど、私があまりにも落ち込んだ雰囲気を醸し出しているからだろうか、決して彼は笑わなかった。


「…うん。真ちゃんじゃなくて、黄瀬くんに当たっちゃったけど」
「まじか…うーん」
「やっぱ…ダメだったよね」
「いや、もしかしたら試合もまずいことになるかも」
「え?」


試合も?私のせいで秀徳バスケ部にまで迷惑が掛かる、そんなことあってはいけないはずなのに。


「真ちゃんさ、あぁ見えて繊細だからさ、動揺してシュート入らなくなったり…それにナマエ、負けちゃえって言っちゃったんだろ?気にしてるんじゃ…って」
「え!どっ…どうしよう!」
「うーん、もし真ちゃんの調子が悪くても俺達は負けねーとは思うけど、試合、一応見てってくんね?」


ナマエも、もし何かあったら嫌だろ?と私の頭をわしわしと撫でながら和成は言う。不安から、じわっと再び熱がこもった目に気付いたのか、袖で私の顔を拭った。


本当、自分でも単純だと思う。和成に気づかされただけで、自分で傷つけた相手が傷つくのを今では心から心配している。


ただ、単純なんです



「うん…本当ごめん、大事な試合なのに」
「いやいや、大丈夫だって!ナマエが思ってるより秀徳は全然強いから!」




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