なぜか私は今WC(ウィンターカップ、トイレじゃない)の会場にきている。真ちゃんの応援、何て可愛らしいものではなく朝に彼からの電話で起こされて用を言いつけられたためだ。


『今日のラッキーアイテムが家に見当たらなくて用意する時間もなかったので、試合に間に合うように手にいれて、今から持ってきて欲しい』


と、しかも言うだけ言って切るものだからたちが悪い。すかさずリダイヤルしても出る気配がなくて、携帯を叩き割りたい衝動にかられた。けれどそのあとすぐに、『頼りにしている』なんてメールが送られてきたから、仕方ないと割り切ってこうして試合会場まで来たのだ。

まぁ、メールが送られて来て私の電話は無視ってところは会ってから締めることにした。

だけれど会場についた私は今あまり信じられない…というか、信じたくない光景を目の当たりにしている。


「何でハサミとか持ってんスか?」
「ラッキーアイテムに決まっているだろうバカめ」


あの人気モデルの黄瀬涼太くんと真ちゃんが中学の時同じバスケ部だったことは知っているし、真ちゃんが居た時の帝光中バスケ部のレギュラーがキセキの世代って呼ばれてたことも知っている。

だけれど、私にとって重要なのはそんなことじゃなくて真ちゃんが、今、まさに彼の持っているハサミが今日のラッキーアイテムだと彼が言い切ったことだ。じゃあ私が今、わざわざ家から持ってきた新品のこのトイレの芳香剤は何なんだ。


「痛っ…って、何スかこれ…トイレの芳香剤?」
「…ミョウジ!もしかして、今の話聞いて」
「真ちゃんのバーカ!もうラッキーアイテム何か知らない!今日の試合だって負けちゃえばいい!」


勢いで芳香剤を投げつけ、言うだけ言ってその場を走って立ち去った。真ちゃんが追ってくる気配がなくてまた、何故か涙が止まらなかった。


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