「最近ナマエと真ちゃんって本当に仲いいよな」


和成は真ちゃんと違って、私のクラスの中まで堂々と入ってくる。真ちゃんは教室に来た時にクラスメートが私を呼ぶのですぐ気づくが、和成は気が付くと目の前にいて、いきなり話し出したりするので少し心臓に悪い。


「…不本意だけどね。そもそもあれは仲いいって言えるのかな」


内心びっくりしながらも、何事もなかったかのように和成に返事をする。私と真ちゃんが仲が良い、何て考えたこともなかった。そういえばクラスメートからどう思われてるのか、とかも考えたことなかったな、と少し不安になってくる。少し緊張しながら和成の返事を待つと、何とも気の抜けたというか、どうでも良さそうな返答を貰った。


「さぁ?傍から見てる分には仲よさそうに見えるけどなー」
「まぁ、利用されてるだけな気もするけどね。何でか私もいっつも真ちゃんのラッキーアイテム持ってるし」
「うーん…あ、そういえばナマエ、真ちゃんのファン達に目つけられてるっぽいぜ。一応警告な」
「ファンなんていたんだ」
「驚くところそこかよ!」


目をつけられるって、私が能動的に話しかけに行っているならまだしも、真ちゃんが私に話しかけに来てるだけなのに。それよりも真ちゃんにファンがいたことの方が驚きだ。少し考えてもファンのできる要素は全く見当たらなかった。そもそも考えてみれば私、真ちゃんのバスケしてるとこ見たことない。


「あ、ホラ噂をすれば真ちゃんだぜ」
「…ほんとだ」


和成が私の前の席に座っているからなのか、珍しく真ちゃんも教室に入ってきて私の席の横に立つ。座っている私と、立っている真ちゃん、と座っている和成。…威圧感が半端ないです。ぶっちゃけ少し怖い。


「ミョウジ、マスカラ持ってるか」
「マラカスじゃなくて?」
「マラカスなら家にある。マスカラだからミョウジのとこに来たんだ」


和成が横にいると、見事に私の心を代弁してくれて便利だということに始めて気づいた。…というか真ちゃんマラカス持ってるんだ。


「…はい」
「ギャハハ!真ちゃんマラカス持ってんのかよ!あ、そうそう、ところで真ちゃんって何でナマエの所にラッキーアイテム探しに来るの?」


和成の笑い声が教室に響いて、心なしかクラスメート達の視線が私たちに集まった気がする。和成が真ちゃんに聞いた質問は、私が結構前から聞きたかったことだ。けれど多分私は聞くことができなかっただろうから、ドキドキしながら真ちゃんの返事を待つ。


「これだけ俺が見つけられなかったラッキーアイテムをミョウジが持ってるってことは運命だからだろう」
「「は?う…運命!?」」


真ちゃんからの想定外の答えに思わず声が裏返る。運命、なんて考えもしなかった。そういえばあれだけ熱心にラッキーアイテムを所持しようとするくらいだから真ちゃんが運命論者でも何ら不思議はなかったけれど、私と真ちゃんの間の不思議な関係もまさか運命で片づけられるとは。


「そうだ。偶然の重なりは必然だ、ということはそれは運命だろう」
「運命って…それってある意味告白じゃねぇ?」
「は?高尾、何を言ってるのだよ」
「…二人とも、もうチャイムなるよ」


だから早く帰れ、と二人を追い返す。ふと視線を感じてそちらを見ると、となりの席の友人が憐れむような目で私を見ていた。


**********


その日の放課後、私は呼び出しを受けていた。もしかして告白、何て思う隙もなく、呼び出されたところについた瞬間、私を待ち構えていたであろう女子に取り囲まれる。和成に警告されたその日にこれかよ、と若干頭が痛くなりながらも女子の相手をする。リンチ、されなきゃいいけど。


「あの…ミョウジさんですよね!」
「…あなたたちは誰ですか」
「ミョウジさんって緑間君と付き合ってるの?」
「いや、付き合ってませんが」
「えっ、じゃあなんであんなに緑間君がお話ししに行くの?」
「さぁ…ラッキーアイテム係だから?」
「何で緑間君のラッキーアイテム?係に」
「えっと、理由を聞いてるんだよね?そんなの私が知りたいです…」



理由?私が知りたいです



「和成ー、真ちゃんって本当にモテるんだね」
「あ、やっぱりなんか言われた?真ちゃん、変人だけど顔はきれいだからな」
「完璧とばっちりだよ…」



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