いつものように休み時間に真ちゃんからのお呼び出しをくらう。毎日ではないにしても一週間に確実に三回は彼からの呼び出しを受けている気がする。


「ミョウジ、ビューラー?というものを持っているか」
「また随分変なものがラッキーアイテムだったんだね」


たまにラッキーアイテム以外の者(教科書とか)を貸してくれと言いに来ることもある彼だけど、流石に今回のものはラッキーアイテムだろう。でないと少し引く。


「?ビューラーとは何なのだよ?」
「まつ毛を上向きにするの、ぐいって押し上げて」
「…それをする必要があるのか?」
「オシャレだよオシャレ」


ビューラーが何であるかも知らずに私に借りに来たらしい、てっきり私が女子だから借りに来たものだと思っていたけれど。まぁ、真ちゃんがクラスの男子にビューラーを貸してくれって聞いていたらそれはそれで面白いだろうけど、どこか可哀想だから今回私に直接借りに来たのは正解だと思う。

普通の高校生男子はビューラーを知らないものか、とも考えたけれど、そういえば真ちゃんは一般男子じゃなかったなぁ、と気づいてビューラーの説明をしてあげる。彼は女子がビューラーをする意味を、全く理解できなかったらしい。


「まぁいい、ところでミョウジはそれを持っているのか?」
「持ってるけど…」
「貸してくれ」


ビューラーも使い方を説明しても理解しないような奴に所持されるのは不本意だろう、と私はいたずらを思いついた。急いで自分のカバンからポーチを取り出し、真ちゃんに駆け寄る。


「…真ちゃんしゃがんで、目、瞑って」
「?何でなのだよ」
「いいから、ホラ早くしないと休み時間終わっちゃうよ?あ、眼鏡も外してね」


改めてまじかに真ちゃんの伏せられたまつ毛を見るとすごく長くて密度もすごく濃い。そっとビューラーを押し当てると何をされるのかわからないからだろうけど、真ちゃんがびくっと少し身震いしたのが解った。

ぐっとビューラーに力を込めて放すと、一回でほぼすべてのまつ毛がきれいに上を向いた。そのままもう片方のまつ毛にも押し当てて、放す。目を開けてもいいよ、と真ちゃんに声をかけると恐る恐る目を開けた真ちゃんと目が合う。


「ふはっ!和成っ和成呼んでくるから真ちゃんちょっとそのままで待ってて!」
「何なのだよ…」


呆れた様な声を出す真ちゃんを教室前の廊下に一人残して、私は隣のクラスを目指した。



どうなんでしょう、この関係?



「ギャハハハ!真ちゃん何それ、ほんとウケんだけど!」
「まつ毛長いからつけましてるように見えるよね!」
「いいからはやくそれを貸すのだよ!」



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