いつも私は敦の家にいる。朝はさすがに違うけれど、私が帰る家は敦の家だ。両親が共働きだから、昔から預けられていたっていう理由で、今も大体そんな理由。いつもは部活の終わりから、両親が帰ってくるまで。

けど今日は、小学生の時みたいに昼間から敦の家にいる。両親の会社にはお盆休みなんてものは存在しないらしい、相変わらずの激務で、今朝も嘆いてた。そんなわけで朝からお邪魔してます。

「あっついねー」
「だねー、せっかく練習が休みなのに、これじゃあ何もする気起きない…」
「そうだねぇ…でも私お母さんに、お使い頼まれてるんだよね」
「おばさん容赦ないね…」
「ね…」

少しでも涼しいところを、と小さい頃に探した結果は廊下だった。それ以来あまりにも暑い日は、お行儀は悪いけど、頭を突き合わせた状態で、2人して廊下に寝転がる。年々、敦は幅が辛そうになっていて、新しい場所を探さないとなぁ、なんて思ったり。寝返りを打って、ひんやりとしたフローリングの冷たさにうっとりする。仰向けからうつ伏せになると、上目遣いで私の方を見る敦と目が合う。

「行く?」
「え、いいよ。夕方にでも行くから」
「いいから。俺、荷物持つから…熱中症になられても嫌だし」
「…ありがと」

**********

外は相変わらずの猛暑で、一歩踏み出すたびに汗が噴き出す気がした。暑いと口を開くのも億劫になってしまって、お互いほぼ無言でスーパーまでの道を歩く。途中、敦が公園の近くでちょっ待って、と言って走っていく。ちょうど入り口の近くに東屋があったので、座って待つことにする。日陰でも、ねっとりと絡みつくように暑い。

今日の買い物メモを見ながら、敦がいる分、頼まれたものの他にも何か買ちゃおうかな、と考える。お米とか、トイレットペーパーとか、色々と思い浮かべていると、背中にいきなり冷たいものが当てられた。

「うひゃっ!」
「ラムネ、懐かしいから買っちゃった」
「びっくりした!心臓に悪いよ!」

敦は私の非難も笑ってスルーして、どーぞ、と私の分を渡してくる。少しむっとしたけれど、この暑さの中で目の前に差し出された冷たいラムネには抗えない。

ぽんっ、と気持ちのいい音がして、ビー玉が下に落ちる。口をつけると、炭酸の泡が唇、舌、喉を心地よく刺激する。

「昔、お祭りで飲んだねぇ」
「だね、オレ未だにガラス玉の取り方わかんない」
「私もわかんないや。敦あの時無理やり割ったよね」
「だっけ?あ、でも怒られた記憶はある」
「それだよ!」
「まだ、探したらあるかも」
「帰ったら探そうか」
「だね、じゃあ早く買い物すませなきゃ」

何気ない日常の記憶がこうしてまた、敦で更新されていく。

ラムネ、しゅわしゅわ


×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -