「ナマエと真ちゃんって本当、ラブラブだよな」


以前にも、似たようなことを同じような状況で言われた気がする。休み時間、気が付けば目の前の席には和成が座っていて、彼は頬杖をついたままぽつりと漏らした。以前の私なら否定していただろう言葉にも、今では素直に肯定の言葉を返す。


「でしょ?って言ってもまぁ、やってることは付き合う前と何も変わらないんだけどね」
「まーな。でもさ、あれで付き合ってないって言い張ってる方が変だったんだよ」
「…そう?」
「うん。俺はいつ付き合い始めるのか毎日楽しみにしてたもん」


和成はにやり、と笑って私の方を見る。そんな風に思われていたなんて予想もしていなくて、驚きを隠せない。まだ頭の中が整理できていない状況で、彼が更にまるで私の反応を楽しむかのように笑いながら続ける。


「だって、真ちゃんもナマエもあんなに解り易かったのに、いつまでも付き合わねーんだもん」
「そ、そう…かな?私は全然自覚してなかったけどね」


今、自分の顔が真っ赤であろうことは鏡を見なくてもはっきりとわかる。改めて、以前の自分と真ちゃんの関係性を客観的に伝えられると、こうも恥ずかしいものなのか。何も意識せずにそれをこなしていた当時の自分に賞賛を送りたいくらいだ。


「ナマエが無自覚だったのも、俺は気づいてたからな。あ、真ちゃん」
「真ちゃん!おはよ!」
「なぜ高尾がナマエのクラスにいるのだよ?」


和成が不意に真ちゃんの名前を呼ぶ。振り返るとそこには彼が、いつもよりも眉間にシワを寄せて立っていた。何かしてしまっただろうか、なんて私が考えている間に和成がまた先程よりも満面の笑みでニヤリと、と彼をからかう発言をする。


「あれ、もしかして真ちゃん嫉妬しちゃった?」
「しっ嫉妬など俺がするわけないだろう!」


台詞はともかくとして、真ちゃんの表情、きっとこれは和成の予想外だろう。意外なことに真ちゃんは顔を真っ赤にさせてしまった。私はそれを見て言葉が出なく、むしろそんな彼を見てこちらも照れてしまった。


「うわ、真ちゃんも顔赤っ!俺がナマエを取るわけないって解っててこれって…重症だな」
「うるさいのだよ!」


いつもなら大笑いするだろう和成も、流石にからかうわけにいかないと思ったのか、先程までの笑顔と打って変わって苦笑いを浮かべている。


「ほっほら、二人ともチャイム鳴っちゃうよ?」


真ちゃんが和成を制してからお互いに口を開こうとしないので、解散させるために二人の背中を押した。真ちゃんは自分の教室へ入る前に、一度振り返り私を見る。その姿が何だかいじらしく思えて、微笑んで手を振ると、彼もまた小さく手を挙げてから教室に入って行くのが見えた。


**********


真ちゃんと付き合い始めてから、彼と一緒に帰るために、彼の練習が終わるのを教室で待つことにしたため、必然的に勉強時間が増えたため、以前よりも学力も向上した気がする。

それでも、放課後遅くまでバスケ部の練習をこなした上で更に自主練習までしている真ちゃんにはまだ、適わない。本当に、考えれば考えるほど彼と私は両極端な気がする。


「周りの人から見たらきっと私たち、何で付き合ってるのか不思議…だよね」


そう、思ったことをそのまま口にして、真ちゃんの反応を探ることにした。別に、慰めてほしかった、とかそういうわけではなく、ただ気になったから。


「それは、そうなる運命…だったからだ」


真ちゃんから帰ってきたのは運命、という何とも完結な一言だった。彼のそういう所に、私は救われている気がする。そもそも彼が信じていなければ親しくなることもなかったのだし。一人でうじうじと考えていた自分が急に馬鹿らしく思えた。


「運命ってもねぇー、あんまり実感わかないよ」
「ナマエは信じてないのか?」
「え、ううん。前は違ったけど、今は信じてるよ?」
「…ならいい」


そっぽを向いてしまった真ちゃんの頬は薄らと紅く染まっていて、何だか面白い。その頬を更に赤く染めてみたいと思い、普段あまり自分からは言わない言葉を口にしてみる。


「真ちゃん、好きだよ」
「そんなの当たり前だろう」
「えー、何それ」


けれど彼の口から返ってきたのは何ともつまらない返事で、私は思わず文句を漏らす。


「俺もお前を好きなのだから」
「運命だから、じゃないんだ?」
「うるさいのだよ!」


小さい、消えそうな声で真ちゃんが口にしてくれた、好き、という言葉に私まで赤くなってしまい、それを誤魔化すために彼をからかうとその大きな手で、上から頭を押さえられてしまった。


運命?もちろん信じますよ



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