雲雀がこんなことするなんて。



一人暮らしの雲雀の部屋に入るなりベッドに押し倒された。顔の横に両手を置いているあたり、逃がすつもりはないらしい。雲雀って性欲あったんだ……じゃなくて、と余計な考えを振り払っていると目の前の酔っ払いはじっと私を見つめている。

「あの、雲雀?」
「…」
「とりあえず、水!水飲んで落ち着こう?」


落ち着くべきはむしろ私の方なんじゃないか。けれど雲雀は私を押し倒した体勢のまま動こうとしない。

「なんなの、君」
「……え?」
「イライラするよ」
「…」
「凄く、噛み殺したいな」

そう言って口角を上げる雲雀を見て、素直に恐怖を感じた。いつもの雲雀じゃないということがこんなにも恐ろしく思えるなんて。ゆらり、と雲雀が体を動かした。私はビクッと体を震わせ目をつぶって、この後来るであろう衝撃に身構えたがいくら待っても何も来ない。そっと目を開けると雲雀は肘をつき寝転んでこっちを見ていた。距離は相変わらず近い。しかしその瞳は不機嫌だと言わんばかりだ。

「僕が、怖いの?」
「え、あ…」
「答えなよ」
「だってこんなの雲雀じゃない、」
「…はぁ」

そう言って私の額にかかった髪を払いそっと額に触れるだけのキスをする。そのまま瞼に移動し次は鼻、頬と順番に下りていく。ほんのりお酒のにおいが鼻先を掠める。

「、雲雀!」
「なに」
「、酔ってるんでしょ!お酒の勢いでこんなこと」
「こんなことって?」
「は、」
「教えてよ」
「やっぱり、雲雀、変」
「それってこういうこと?」

右手を私の頬に添えて、ちゅ、と軽いリップ音をさせ、ゆっくりと離れる。唇に柔らかな感触が残っている。キスされたのだと気づくまでに時間はかからなかった。雲雀は獲物を捕えた捕食者のように満足そうな笑みを浮かべている。



「ねえ、僕が酒に飲まれるとでも思った?」





―――――――――――――――

途中で酔いが冷めた雲雀



20120525

×