酷い銃撃戦だった。辺りは瓦礫と屍の山。あのリボーンですら左肩に傷を負っていた。私なんか右肩、左脚にそれぞれ怪我があり、シャツは破れている。簡潔に言えば、ボロボロの状態だった。実力は客観的にも一目瞭然だろう。どうして私がこの任務に連れてこられたのか問いたい。リボーンは今回の任務の後処理をしている。私はというと未だ塞がらない傷口を破れたシャツで押さえ、コンクリートの床に座り込んでいた。 「立てるか?」 「頑張る」 そう言ったものの、貧血と疲労が重なり倒れそうになる。 「おっと」 しっかりと、でも優しく私を受け止めてくれたリボーンは苦笑し、有無を言わさず私をおんぶした。 「疲れた」 「俺もだ」 「お姫様だっこがよかったなー」 「理性がもたねぇ」 「……」 「おい黙るな」 「なんかやだ」 「俺だって男だぞ」 「………」 「引くな」 「リボーン、傷、大丈夫?」 「お前よりはマシ」 「弱いね、私」 「今更だろ」 「……ねぇ、どこに行くの?」 「お前の家」 「なんで」 「手当てしないとやべぇだろ」 「シャマルにしてもらうからいい」 「………」 「リボーンに任せたら、いかがわしいことされそう」 「怪我人を襲う趣味はねぇよ」 「経験上嫌な予感がする」 「信用ねぇな」 「でも、ちょっとしんどいね」 「だから早く手当てしろって言ってるじゃねぇか」 「……」 「……」 「……寝るな」 「無理……」 軽く溜め息をつくと歩みを早めた。端から見て出血が多かった気がするからきっと貧血だろうが、それでも心配は拭えない。無用心なこの女の家に入り鍵をかけると手当てを始めた。 目が覚めると辺りは暗くて、まだ頭が痛かった。起き上がろうとすると傷口が痛んだが、綺麗に包帯が巻いてあり、血も拭き取られていた。 「なんで下着だけなの…」 「服は邪魔だったから捨てたぞ」 「えええ」 「何だ」 「手当てありがとうね」 そう言うと彼は面食らったような顔をし、ベッドの上に上がると私の横に寝転んだ。腕を伸ばしてきたので頭を乗せると傷みを感じたのか心なしか顔を歪めた。 「ごめん、」 「大丈夫だ」 「リボーン」 「なんだ」 「リボーン」 「だからなんだ」 「えへへ」 「………………なんなんだ」 「リボーンは手当て、した?」 「俺は平気だ」 「いいから見せて」 無理矢理上着を脱がせると左肩に銃弾を掠めたような傷があった。もう血は固まり傷口は塞ぎかけていたが手当てをした形跡は見られない。 「自分の手当てもしてよ」 「お前のほうが酷かっただろ」 「…ごめんね」 「……しんみりすんな」 くしゃっと頭を撫でられたので、そっと傷口に口付けるとまた少し顔を歪めた。見上げるとリボーンの顔がほんの数センチの距離にあったので頬にキスをした。 「…痛かった?」 「俺はマゾじゃねぇぞ」 「手当てのお礼」 「……こっちの方がいい」 そう言って唇を押しあてるだけのキスをされた。ゆっくりと離れ、そしてまた見つめ合う。視線で互いの意志疎通が出来た気がした。するとリボーンは両腕で私を引き寄せ、唇を食むようにキスしてきた。その気にさせないで、と目で訴えても彼は強引に舌を割り込んでくる。互いの舌が絡み合い静かな部屋に唾液の音がいやらしく響いて何度も何度も貪るように求められる。息つく暇も与えられなくて、息苦しくて、離れようとしても両手でしっかりと顔を挟まれてそれは叶わなかった。もう、どちらのものかわからなくなった唾液がだらしなく私の口を伝う。体が熱くなるのを感じ、口を離したときには私は息があがっていて、すっかり欲情していた。 「、リボーン」 「……………なんだ」 「もっと、」 「お前は怪我人だろ」 「リボーンが、私をその気にさせたのに、」 「続きは怪我が完治してからだ」 そう言って微笑むリボーンが憎らしかった。 title by 知絵梨 20110723 ×
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