建物を飛び出してまっすぐ公衆電話に向かった。今行くとしたらあの人のところしかない。電話が繋がると思いの外はきはきした声がした。

「ディーノ」
「久しぶりだな!どうしたんだ?」
「会いたい」
「…今どこにいる」

今いる場所を簡単に伝えて電話を切った。近くの段差に腰を下ろすと氷のように冷たかった。無我夢中で飛び出してきたから気がつかなかったけど辺りは雪が降っていた。払っても雪が服に積もるから途中で面倒になって止めた。もう、冬なんだ。
キッと軽いブレーキ音がしたと思うとスーツを着たディーノが走ってきた。不謹慎にもかっこいいと思ってしまう自分がいて少し安心した。余裕だなあ私。

「、どうしたんだよ」
「解雇だって」
「へ?」
「ザンザスに捨てられちゃった」

私がそれだけ言うとディーノは自分のコートを私の肩にかけてくれて抱きしめてくれた。本当に紳士だなあ。

「早く車に乗れって」
「どこに行くの?」
「んー決めてないけど」
「じゃあどこかのホテル!」
「…了解!」

ディーノが何も聞かないから私も何も話さない。沈黙が続くかと思いきや、彼が最近身の周りで起きたことを饒舌に喋ってくれたおかげで車内は割と和やかだった。そこでふと疑問に思ったけど、普段からこんなに喋る人だったっけ?

「ねえディーノ」
「ん?」
「お酒飲んだ?」
「ちょっとだけ」
「…私運転変わるよ」
「俺に任せろって」
「気づかなくてごめん」
「もう着いたし」
「あ」

噛み合わない会話をしているうちに豪華なホテルに着いた。車のキーはホテルのフロントの人に預けて部屋に向かう。ディーノの名前を出すとすぐに部屋を用意してくれたから改めてキャッバローネの凄さを実感した。ディーノは相当お酒を飲まされたみたいで体を支えてあげないと歩けないらしかった。電話したときははっきりした口調だったのにこんなことになっているんだから、飲まされたのはきっとその後だと確信した。部屋に着くとそのままソファに倒れこんだ。

「悪い」
「ディーノは寝てなよ」
「お前を慰めようと思ってたんだけどな」
「会えただけでも嬉しいよ」
「…」
「どしたの」
「ほんと、かわいい奴」

そう言ってぐっと私の手を引いたのでディーノの上に乗っかる姿勢になった。

「逃がさない」
「ばか」
「電話嬉しかったぜ」
「ほんと?」
「そのせいでリボーンに飲まされたけど」
「…ごめん」
「おかげでお前と一緒にいられるんだから結果オーライってとこだな」
「ディーノ」
「なんだ?」
「キスしたい」

軽くディーノにキスすると彼も軽くキスしてくれた。だから次は息つく暇もないくらい深く口づけて、お互いの舌を絡ませた。愛してほしい。満たしてほしい。その気持ちが伝わったのか、口を離して見つめあうと抱き上げられベッドに移動した。

「好きだ」
「うん」
「好きなんだ」
「嬉しくて泣きそう」
「でもやっぱだめだ」
「…どうして」
「お前にはリボーンがいるじゃねえか」
「やめてよ」
「幸せになってほしいんだ」
「私は、」
「あいつが本気で愛した女は後にも先にもお前しかいないんだぜ?」
「でも」
「大丈夫だって!」

ぎゅっと私を安心させるように抱きしめてくれるけど、私が言いたいのはそんなんじゃない。今、会って慰めてくれるなら誰でもよかった。ディーノを頼ったら国外、もしくは国内のどこか目立たないところに私を逃がしてくれるかもしれない。そんな淡い期待を抱いたからだった。ボンゴレの人には会わずひっそりといなくなりたかった。もうボンゴレにはいられない。











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