車に寄りかかり腕を組んでスクアーロが待っていた。夜風に靡いている白銀の髪はヴァリアーの隊服によく映えて美しい。彼は私の気配に気づいて振り返ると溜め息をついた。

「風邪ひくぞぉ」
「上着ない」
「車に置いてある。早く乗れぇ」

このくそ寒い中なんで持ってないんだとかぶつぶつ言ってるスクアーロを無視して急いで車に乗り込んだ。車内は暖かい空気で満たされていた。大好きなココアも用意されていたけど悴んだ指先では蓋が開けられなくて、とりあえず手を温めることに徹した。迎えなんて部下に頼めばいいのに私の我が儘に従っていつも迎えに来てくれるんだからつくづく彼は私に甘い。疲れてるくせに。

「…発車しないの?」
「話がある」
「ん?」
「恐らく今日で最後だぁ」
「主語がない」
「クソボスに婚約者ができたんだぁ!」
「そっ、か」
「いくらあいつでもこの縁談だけはどうにも出来ないらしい」
「今の私って娼婦みたいなものでしょ?元々たいした関係じゃないのよ」
「不自然な喋り方は止めろぉ」
「それで、私は死ぬの?」
「あいつ次第だぁ。詳しくはこれから聞いてこい」
「ヴァリアー辞めよっかな…」
「簡単に言うなぁ」
「まだ時間はある?」
「クソボスとの約束の時間まで3時間ある」

スクアーロの言葉を聞くと同時に運転席を倒す。彼はあまり動じていなかったけど私がキスをするとさすがに少し驚いた顔をしていた。後部座席にいた私はキスをしながら運転席のスクアーロの上に移動する。何度も、徐々に深く口付けても彼は何もしてこない。空しすぎる。泣きそう。

「さみしい」
「大丈夫だぁ」
「不安」
「杞憂だろぉ」
「頭悪いなー私」

こんな事してスクアーロを繋ぎ止めることができるとは思ってないけど、この人まで離れて行ってほしくない。
幸せが、長続きしたことがない。永遠に幸せな状態を期待している訳じゃないけど、私の場合期間が短すぎるのだ。それでもずっと愛されていたいから多くの人に愛の安売りをする。枕を濡らす日はたくさんあったけど、一瞬でもいいから満たされたい。ザンザスに買われたことは幸運だった。

スクアーロはもう一度、大丈夫だぁと言ってやさしく抱き締めた後私を持ち上げて助手席に移動させ、発進した。














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