「お、それ血?そそるねー」
「ベル、服貸して」
「王子シカトとか何様だよ」

ま、お前なら許すけどー、表情の読めないベルは私を横抱きにして自室に向かう。お姫様みたい、当たり前じゃん俺王子だもん、機嫌いいね、まあね、とりとめのない会話をしているとすぐに部屋に着いた。ベルがいつも着ているボーダーのTシャツと細身のジーンズを手渡されてとりあえず着替える。

「どしたの」
「フツーに着替えんね」
「ベルだからね」
「恥ずかしがるとかないわけ」
「そんなに見ないでー」
「うぜ」

さっさと着替えて昨日のドレスは捨てた。こんなに染みになっているのならもういいや。ベルを見ると退屈そうにナイフを壁に投げている。

「ありがとねベル」
「キモい」
「ツンツンしないの」

頭を撫でてやると大人しくなり、私のお腹に抱き着いたのでやっぱりまだ子どもなんだなあと思った。抱き締め返すと苦しい、と私の背中をバシバシ叩いた。

「やめてよ」
「もう帰んの?」
「ザンザスに呼び出されちゃった」
「今度はボスかよ」

そう言いながら手を離したかと思うと私の髪を引っ張ってキスをしてきた。びっくりしてベルを見つめると、服代ね、と言ってしししと笑っていた。

ベルの部屋を後にしてスクアーロを訪ねに行き、ノックをすると部屋の中から何だぁとドスのきいた声が聞こえた。任務のことなんだけど、そう言い終わる前にドアが勢いよく開きスクアーロに手を引っ張られベッドの上に座らされた。

「いつ帰ってきたぁ!」
「い…今」
「昨晩どこに行ってた」
「どこだって、いいでしょ」

ふい、と目線を逸らすとクソボスが探してたぞぉ、と隣に座りながら言った。

「全く、勝手なんだから」
「あいつはそういう奴だぁ」
「私もスクアーロぐらいあの人のこと理解してあげれたらなあ」

よかったんだけどね。自嘲気味に笑うとスクアーロは私の肩を引き寄せて、お前は十分頑張ってるだのいろいろ慰めてくれるから心が暖かくなった。ちょっとだけでいいから、と断りを入れてスクアーロに抱き着くと最初戸惑っていたもののしっかり抱き締めてくれた。

「今日の任務は?」
「ムードとかねぇのかぁ」
「わざと。だってこれ以上はスクアーロのこと好きになっちゃいそうだから」
「俺を殺す気か」
「ザンザスは私のこと、何とも思ってないよ」
「本気で言ってんのか」

まだ反論しようとする私を黙らせるようにスクアーロは自分の胸元に私の顔を押しつけた。

「俺はお前の味方だ」
「本当?」
「嘘じゃねぇ」
「本当に本当?」
「しつけぇぞぉ」

そのまま二人一緒にベッドに倒れこむと額にキスをされた。ニヒルに笑うスクアーロがかっこいいから私からはちゃんと唇にしてあげると焦っていた。

「ゔぉぉい!調子にのりすぎだぁ!」
「いいじゃない」
「俺が大丈夫じゃねぇ」

私の首筋に口づけながら、お前大丈夫かぁ、と心配の言葉をかけてくれるから今だけでも嬉しかった。

「ん。大丈夫」
「我慢するな」
「リボーンにも同じようなこと言われたよ」
「…いつか消えてしまいそうだ」
「人を幽霊みたいに言わないでよ」
「…」


さ、任務任務!ベッドから飛び降りてスクアーロの手を引っ張ると、煮え切らないといった顔をしていたけどしぶしぶ車に向かった。








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