※ただいちゃこらしてるだけ

「ザンザス様ー」

「…なんだ」

「ふへへ、大好きー」

「……そうか」


ふにゃふにゃと顔を緩ませながら今まで何度言ったか分からない言葉を発する。私を抱きしめてくれる逞しい腕が好きだ。部下には怖がられてるけど私を見る時は優しいその瞳が好きだ。言葉が悪いけれど愛を囁いてくれるその口も大好きだ。スペルビ師匠や幹部には少し暴君なザンザス様は多分、他の人に対して大分私に甘い。
こうしてぎゅうと腰に腕を回して抱きついて煩いほど好きだと言っても私を振り払わない所や、黙れなんて事も言われない辺り私はザンザス様に甘やかされてるような気がする。

元々私は日本に住んでいた。そこで近所の綱吉くんにリング戦、というものに巻き込まれてヴァリアーに出会った。いきなり連れ去られてザンザス様に会った時はもの凄く怖かったけど、今はそんな事は一切ない。剣道をやっていた事もあってその腕を買われてスペルビ師匠に稽古を付けてもらい、何年か後にヴァリアーに入隊した。最初はザンザス様は恐怖の対象でしか無かったけど行き詰まってる時や泣きたい時、ぶっきらぼうにだけど、側にいてくれたのはザンザス様だった。そして大好きなザンザス様をお守りするためにヴァリアーの雲の守護者という役割についた。最初ザンザス様は反対した。なんで、って師匠に聞いてみたら理由が「心配なんじゃないか」だって。さらにザンザス様からお前は俺が守る、なんて少女漫画みたいな事も言われた。その優しさが嬉しくて、でもやっぱりそんなザンザス様をどうしてもお守りしたくて雲の守護者に就任した。


「ふふ、ザンザス様私今凄く幸せです」

「そうか」

「ザンザス様も幸せ? 」

「……そう、だな」


少し考えるそぶりを見せたザンザス様は私を抱きしめる腕を少し強めて私の肩に頭を埋めた。ザンザス様の黒の髪の毛が顔にかかって少し擽ったい。


「…ナマエ。好きだ」

「なら私は愛してます、」

「、…そうか」


あ、ザンザス様がむこう側を向いた。ザンザス様がそっぽ向くのは少し照れてる合図。


ほんの少し赤い耳がなんかどうしても可愛く見えて、ふにゃりと顔を緩めて抱きつく腕に力を込めた。