「平和島さん!」
「…」
「ねえ平和島さんってばぁ〜」
「……」
「聞いてる〜?」
「………」
「こちょこちょしちゃうぞ〜」
「………るせぇ」
「ぎゃふっ!」
そのふわふわした頭をグーで殴るとそいつは変な声を上げる。痛ててと殴られた頭を抑えてふらふらと歩きながら私に着いてきた。どさくさに紛れて私の腰にひっつくものだからさらにうざったい。芋虫かこいつ。
「痛いよ!細胞百個死んだ!」
「…元から細胞ない癖に」
「ガーン!」
さっきから苛立つ程に私に擦り寄ってくる。効果音を口から発しているのにも苛っとくる。折原臨也並にうざい。うざったい。
彼女──萩原南欧は並盛中学1-Aに所属するいわゆる電波ちゃんという奴だ。入学当初からこんな風に訳の分からない事ばかり言うものだから、クラスの皆から一線引かれているのである。それを知ってるのか知らないのか、どちらか分からないがまあ本人がとても楽しそうなので放っておく事にする。
私の何が気に入ったのか理解できないが、私が転校してきてからずっと私に引っ付いたままなのだ。折角可愛らしい顔してるのにその性格の所為で勿体無い。
「平和島さんってすっごい美人さんだね、ユリナちゃんみたい!」
「…別に(ユリナちゃんて誰)」
「あ、ユリナちゃんてのは火星から来た火星人の女の子の事!」
「(やっぱり電波だ)」
土星やら火星やらから来ただかなんだか知らないがこいつといると疲れるという事だけは分かる。てかユリナちゃんてなんだ。
…新しく進学した並盛中学一年ではもう女子特有の仲良しグループとかいうものが完成に近い形で出来上がっているらしく、私が入る隙はもう無いに等しい。それはこの萩原南欧にも同じ事らしく、=私が萩原南欧と仲良くなるという式が出来上がるわけである。…勘弁してほしい。池袋では折原臨也の所為と、色々な噂の事もあってか仲の良い人なんて一人もいなかった。友達なんてもってのほかだ。だが、別に私は友達が欲しい訳ではない。か、勘違いしないでよね!…なんてツンデレっぽく言うが別に私はこいつに友達になってほしいなんて思ってない。
別に思ってなんて…
「あ!平和島さんの事、千秋ちゃんて呼んでもいい?
…ふへへ、私昔から友達の事名前で呼ぶの、夢だったんだ!」
思ってない…はず、