「千秋さん!」
どん、と後ろから腰に重い衝撃が走る。また萩原かと思えば何か声も重さも違った。
でもあれ、なんかデジャヴ、
一体誰だと振り返ればそれは見ない顔で。浅葱色のマフラーにくりくりとした丸い大きな瞳。その見慣れない顔に困惑しながらも口を開こうとすると目の前の自分より背の低い小学生位のその男の子は慌てたようにこう言った。
「ごめんなさい!つい突撃しちゃって…!」
「…いや、大丈夫」
「僕はフゥ太って言うんだ!ねえねえ、千秋姉って呼んでいい?」
「いいけど、…」
フゥ太、フゥ太……ってなんかそういえば原作にいた気がするぞ…。よくは覚えていないが。なんとか星の王子…だったか?
顎に手をあてて、むむ、と考えてるとフゥ太はどこから取り出したのか顔よりも遥かに大きい分厚い本を取り出し床にそれを広げて自身も寝そべった。そんな綺麗とも言えない床に寝転がると服が汚れてしまうかもしれない。慌てて立つように促そうとするが、フゥ太はそれに構わずに口を開く。
「へへ、千秋姉は女の子の中で世界一力持ちな中学生なんだよ!」
「え、…は!?」
…全然嬉しくねえぇ!
純粋な笑顔でこちらを見上げてくるフゥ太に何か凄く嫌な予感がした。もしも、もしも私のこの力がこの子が話す事によってバレたら…!
「いいか、フゥ太。その情報は誰にも言っちゃ駄目だ」
「?、どうして?」
「…あー、誰にでも知られたくないことはあるでしょ?」
「うーん…分かった」
本当に分かったのか不安だがとりあえず今はよしとする。これ以上ぐだぐだ言うのも面倒臭いしなんか口固そうだから大丈夫だよな。
「えー、と。それで学校になんか用か?」
「あ!そうだった!ねえねえ、ツナ兄ってどこにいるか分かる?」
「ツナ兄…ああ、沢田綱吉か」
正直沢田綱吉に会いたくない。何故だか知らないが一方的に嫌われてるようだし、いや、嫌われてるとまではいかないと思うが、少なくとも苦手意識を持たれていると思う。自分で言って自分でへこむわ結構。
だからと言ってこんな「きゅるるん」とでも効果音が付きそうな捨てられた子犬みたいな顔されたら断れない。渋々それに頷く千秋にフウ太は笑顔を浮かべたのだった。