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体は、甘やかな痛みで相変わらず重い。

二人で並んでゆっくり駅まで歩く。
お互いに多分もう今話さなきゃならない事は無い。

言葉はもうあまりいらないと思った。

着こんでいて暑い。汗がにじむ。

滑り込んできた電車のクーラーを浴びてようやく暑さを忘れる。

百目鬼と並んで電車に座る。

午前中の電車には人がまばらだ。

帰りたくないって言葉がまた頭に浮かぶ。

お互いに何も言わない。

百目鬼の手が俺の手に伸びて、そっと握られる。
百目鬼も帰りたくないなとは言わない。

正直寝不足だ。体も少しだけ無理をした。

電車が、ゴトンゴトンと揺れる。
その揺れが心地よくて、だんだんまぶたが重くなる。

百目鬼の指をそっと撫でる。

百目鬼の手がぎゅっと握りしめてくる。

「眠いなら、寝ててもいいぞ。」

眠気はある。どちらにせよ多分寝てしまうだろう。

だけど、百目鬼との時間がもったいなくて、何とか瞼を閉じない様にする。

「明日から、また一緒にランニングしような。」

俺が言うと百目鬼は「分かった。」と答える。

あと、それから、夏休みあと何日かでいいからを一緒に過ごしたい。
また、セックスをできればしたい。

今度は俺もキスマークを付けたい。


一度考え始めると言いたいことは案外あった。
だけど、眠い頭で出てきたのは言うつもりのない「帰りたくないな。」って言葉だけだった。

百目鬼が今度は俺の指を撫でる。

「俺も――」

そう百目鬼は言った気がしたけれどほとんど眠りかけた頭は何も覚えてはいなかった。

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