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愉悦に満ちた百目鬼の顔を見上げる。

行為に夢中になって腰を打ちつける百目鬼を見るのは嬉しい。
幸せだ。気持ちいい。

色々な気持ちがあふれる。

好きという言葉を何度も伝えるが嬌声にまみれてまともな言葉にならない。

膝を胸に向かって折りたたむ様な体制で、百目鬼を受け入れている。
浴衣は完全にはだけてしまったので脱いだ。

百目鬼は気持ちよくなる場所ばかり狙って突き入れるので、声が高くなる。

ぽたり。

百目鬼の短い髪の毛から汗のしずくが俺の顔に落ちる。

汗がにじんで、壮絶な色気を放つ顔に見入っていると百目鬼が、落ちた汗のしずくを自分の手でぬぐおうとする。

顔に添えられた腕にそっと唇を寄せる。

口寂しくて伸ばした舌を手首の筋にあてると少ししょっぱい。

「なんでお前はそんな風に、好奇心だけで行動するんだ。」

吠える様に百目鬼に言われる。
別に好奇心からの行動ではない。

キスして欲しくて、それの代わりに百目鬼の手首に舌を這わせただけだ。

「別に、好奇心じゃないけど。」

じゃあ、何なのかという視線が注がれる。
促す様に、中を小さく小突くようにゆすられる。

言葉にするのは思ったよりも恥ずかしい。

「……キスを、して欲しいなって。」

声は多分聞き取りにくい位小さい。
ほぼ吐息だけで発音したはずなのに、百目鬼ははあーという長い長い溜息をつく。

さすがに、なよなよしすぎたお願いだったかと自分でも思う。
伝えたこと自体失敗した。

「何でもない――」

打ち消そうとした言葉は百目鬼の唇に飲み込まれてしまう。

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