58
学校の校門前で待ち合わせをして二人でぼんやりと歩く。
制服じゃないのが少しだけ新鮮だ。
それに百目鬼は妙にさっぱりしている気がする。
それに柔道部員の気配がない。
「あんた、一旦家に帰ったのか?」
俺が言うと、少し照れくさそうに汗が酷かったからと百目鬼が言う。
別にそんな事気にしやしないのにと思う。
そのままコンビニによって棒アイスを二つ買う。
俺がチョコレートのやつで、百目鬼はソーダ味。
どこに行こうか悩んでいつもの川辺の遊歩道へ向かう。
ランニングコースの中に川まで舗装されている部分があった筈だ。
じっとりと暑い日だけれど、二人きりになれる場所に行きたかった。
土手から川に向かってコンクリートの階段みたいなところに二人で並んで座る。
アイスを食べながら流れる川を見る。
視線だけ百目鬼の方に向けると、百目鬼はこちらを眺めている。
目があう。視線が絡む。
百目鬼の持っているアイスキャンディからしずくが手に伝わって落ちる。
それを舐めとりたいなんて思う。
「大会が終わったら――」
「ああ、勝負をつけるんだろ?」
俺の言葉に百目鬼が応える。
「まあ、それもそうなんだけど」
それも勿論ある。
勝ちたいと渇望する気持ちはあるし、彼と仕合いで対峙しても戦えないなんてメンタルとは違う。
だけどそれだけじゃない。
「一緒に鍛錬してみたいし、それに、夏休みらしい事なんかしたい」
別に夏休みらしくない事でもなんでもいいのが本音だ。
今日みたいにただ、アイス食べるだけでもいい。
自分でもうざくなっているのが分かる。
「ああ、そうだな。
俺も会いたい。」
別に寂しいとも毎日会いたいとも言っていない。
なのに、百目鬼はそう返した。
少し涙が出そうになった。
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