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夏休みになった。
朝一人でランニングをする。

ずっと一人で毎日走っていた。
ここのところ百目鬼と走っていたというだけで、それまではずっと一人で走っていたのだ。

今まで通りの筈なのにしっくりこなくて愕然とする。

だって、たったの一週間だ。それがいつまでかも、理由だってちゃんと分かっている。
百目鬼の合宿期間中は会えないから一人で走る。
ただそれだけの事の筈なのだ。

夏休みに入る前、電話番号もメッセージアプリのIDも交換した。
そもそも、お互いそういうのをマメにやるタイプでもない。

黙々と一人で走っていることはできている。習慣というよりはもはやクセの様になっているため、いくらでも出来はする。

だけど――

まるで、百目鬼がいなくて寂しいみたいじゃないか。

気が付いてしまったらいけないのに、そう思ってしまう。


寂しいのか? まさか、と自分でも思う。
そんなのすごく百目鬼が好きみたいじゃないか。
別に嫌いじゃない。好きだし告白もした。
だけど、そんんあ少しの時間で寂しくなってしまう様なそんな感じではないと思ってた。

「は……?」

自分でも自分の事がよく分からない。
じわじわと顔が熱い。

今日もし電話がきたら、なんて話せばいいのだ。
それよりも、次会う時に今まで通りの顔で話ができるのか。

今まで通りって、どんなだ?
まずい。

俺、いつの間にこんなに百目鬼の事が好きになってたんだ?

「ははっ、まずいだろうこれ。」

自覚してしまうと止まらない。

あいつがいないと寂しい。
すぐにでも会いたい。

心の通り伝えたら、あいつはどんな顔をするあろう。


そのままいつもより長い距離を走って、汗だくになって帰った。

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