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46

それじゃあ信号機のある交差点までという事で二人で並んで歩く。
首元から見えてしまっている噛み跡はタオルを巻いてごまかしている。


「……別に賭けにしなくてよかったんじゃないか?」

おぼつかない足取りで歩きながら百目鬼に聞く。
何の事と言わなくても百目鬼には分かったみたいだった。

あの日の勝負の事だ。
彼から言い出したものじゃなかったとはいえ、賭けにする必要なんてなかった。

「だから、諦めたかったんだ。」
「最初から負けるつもりだったって事か?」

俺に負けて諦めようとしていたと百目鬼は言いたいのだろう。
俺が道場に通ってると知っていたからだろうか。

そんな風には思えない。

「すぐに態と負けて終わりにしようと思ってたんだがな……。」

欲が出た。

確かにそう百目鬼は言った。
それが、勝負に勝つことに対する欲なのか、俺に対する欲の話なのかは言葉からは分からなかった。

けれど、もう一度聞きなおすのは百目鬼の表情を見てやめた。

どちらでも結果はそれほど変わらないと思ったからだ。

「今度、仕合うときは本気でやれよ。」
「勿論。」

まだやるつもりか? と百目鬼は聞かなかった。
付き合うとか付き合わないとか、そういうものを賭けるのではなく純粋に百目鬼という男と向き合ってみたい。

今日の大会をみてより一層そう思った。

「ただ、申し訳ないんだけど、明日のランニングはパスで。」

さすがにまともに走れそうに無い。
百目鬼は笑って「明日迎えに行こうか?」と聞いた。

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