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正直、自分でも否定したいと思っていた。

百目鬼がその件に触れないのであれば、こちらからその話を持ち出さないのがいいとさえ思っていた。

だけど、自分の不用意な言葉がきっかけとはいえここで引き下がりたくはなかった。
自分の体を明け渡していい位の気持ちはあるのだ。

この気持ちをなんと言って伝えよう。

一瞬、百目鬼と同じように卑猥な言葉を伝えてしまおうかと思ったけれど、当てつけみたいなのでやめた。

なんと言って伝えればいいだろう。


「愛してる。」


思ったよりすんなりと言葉が出た。
好きだという方がよかったのかもしれないけれど、口から出てきたのがこっちだった。

「は?」

百目鬼が体を固まらせて、俺の事を見上げる。
ありえない、と顔に書いてあるみたいな表情だ。

それが面白くて思わず、百目鬼のあたまをわしゃわしゃする。

「冗談だろ……?」

ここで、このタイミングでそれを聞くのか。
俺だって何度もそう思ったのに、はぐらかした百目鬼がそれを聞くのか。

「さすがに、そこまで悪趣味なことはしないけど。」

キスをして、自分の恋愛感情を告げる。
それを悪い冗談としてやるほど人間終わってない。

だけど、この気持ちを証明する方法があまり無いのも知っている。
それから、百目鬼がそれを疑っていることも。

俺だって百目鬼の言葉を疑っていた。その言葉は後に取っておく。

百目鬼にまたがってしまっているので脱ぎにくかったけれど、ハーフパンツを脱ぐ。

それから、百目鬼に笑いかける。
多分結構あくどい顔をしていると思う。

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