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はっ、という大きな空気を吸う音が聞こえる。

じわじわと百目鬼の顔が赤くなる。
それで少しだけ安心した。

これまでの何もかもが勘違いで、俺の独りよがりでない事はその顔を見ただけで分かる。
これで、引かれるか、嫌悪感に満ちた顔で見られたらさすがに立ち直れそうもない。
じっと固まる、百目鬼の手から麦茶が少しだけ残ったグラスを取り上げて机の上に置く。
成すがままで動けないらしく、床に腰掛けたままの百目鬼の太ももにまたがる様に抱き着く。

前に、キスをしたことはあった。
感触はちゃんと覚えている。

触れるだけのキスをして至近距離で百目鬼を見る。

もう一度、彼の唇を食む様に口づけをする。

思ったより気恥ずかしくはない。

彼の背中に腕を回して、しばらく見つめあう。

「意外か?」

こんな風に俺からキスをすることが。
セックスをしようと伝えたことが冗談じゃなかったことが。

それとも自分がした告白がこんな結果になることが意外なのだろうか。

何故俺だったのだろう。
俺だから、こんな風に赤い顔になっているって思っていいのだろうか。

もう一度キスをして、今度は舌を入れてみる。
百目鬼は舌は無反応だったので、仕方がなく勝手に舌を絡めて吸う。

跨る様に百目鬼に乗っかって置いてよかったと少しだけ思う。
少しずつ百目鬼の下肢が兆《きざ》しているのが分かる。

「なあ……。」

あまりに反応のない百目鬼にじれて唇を離す。
なんて聞こうか少し悩んでそれからまず最初に聞けたのは相変わらずデリカシーのかけらもない事だった。

「なあ、百目鬼は所謂同性愛者ってやつか?」

俺が跨る体制のため、いつもとは違って百目鬼が俺を見上げる体制だ。

百目鬼を見下ろしながらそう聞くと、百目鬼はこちらをじいっと見つめた。

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