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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ランニングは大会の前日まで一緒に走っていた。
別に毎日どうでもいい様な話しかしていない。

そのはずなのに、百目鬼は時々変なスイッチが入ったみたい抱きたいという様な事は言っていた。
それはもう、大会の前日まで。

だから、という訳でも無い。
翌日応援に行ったときにどんな顔をして会うつもりだったのかは自分でも分からない。

多分、その時自分の中で気持ちが高ぶってしまっていたのかもしれない。
自分の大会でもなんでもないのに。

「じゃあ、全国大会で優勝したら抱かせてやろうか。」

さむいなんていうのを通り越して、痛い。馬鹿なことを言ったとすぐに思った。
なんだよ、抱かせてやろうかって。なんでそんな上から目線なんだと自分でも思う。
いつもこんな物言いになってしまう。

案の定、百目鬼は「はっ」という馬鹿にしたような笑い声を出した。
当たり前だ。

悪い、と謝る前に百目鬼がランニングのペースを上げる。
慌てて追いかけようとした。

「覚えておけよ。本気にするから。」

小さな小さな声だった。
怒ってるならそう言えばいい。冗談にしたいならそうすればいい。

いつも百目鬼が言ってるのと同じだろうと思わなくもない。

だけど、百目鬼の言葉をど捉えていいのかよく分からない。
結局、その日はぎくしゃくしたままランニングを終えてしまった。

昼休みも放課後も百目鬼とは会えなかった。
明日から大会が始まるのだ。当たり前だ。



柔道の大会は地元の体育館ホールでやると聞いていた。
地区大会だから、それほど人がいないだろうと思っていた会場は思ったより人が多い。

本格的なカメラを持っている大人も何人もいて、それが百目鬼を撮るためなのだと気が付くのにさほど時間はかからなかった。

観客用の席がアリーナにある。
固いベンチに腰をかけていると、こちらを見上げた百目鬼と目があった。
これから試合が始まるところなのだろう。

おっ! と思い片手を上げると、嬉しそうな表情をした。
けれどそれも一瞬で、ふいっと視線を顔ごとそらされる。

これは応援に来た意味があるのかと思わなくもないけれど、一度百目鬼が柔道をするところを見たかった。

それに、闘志を宿した視線を見れば百目鬼が昨日の事に関わらずやる気になっていることはちゃんと分かっている。


そりゃあそうだ。
俺だって誰かと仕合う時、他の事なんか考えていない。

百目鬼の対戦相手が少しばかり羨ましいと思いながら試合を見つめた。

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