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「あの傷跡を見る度に、性的衝動が抑えられなくなる。」

舐めまわしたいと付け加えられて、うんざりとする。

「というか、あんた俺の傷跡なんていつ見たんだよ。」

同じクラスだったことは無い。

「体育の合同授業の時だが。」

あれは素晴らしかった。と反芻するように言われ思わず百目鬼を見る。
随分特殊な好みをお持ちなこってと思ったところで、そもそもこいつは俺の事が好きなのかもしれないと気が付く。
態々俺を選ぶあたり、相当珍しい好みなことは事実なのだろう。
妙な部分で納得してしまう。

「再戦してくれたら、そんなもんいくらでも見せてやるのに。」

挑発になるだろうか。そう思いながら伝える。
走って息が乱れてる筈なのに、百目鬼のゴクリという唾を飲み込む音が聞こえる。

「どうせなら自分から、股を開いて見せて欲しいな。」

何故、いきなりそっちへ発言がうつるのか理解できない。
足を止めるとすぐに百目鬼も走るのをやめた。

「じゃあっ……!!」

本気で飛び蹴りをしたつもりだった。
けれど百目鬼はそれを難なく避けて、それから大きく息を吐きだした。

ッチという自分の舌打ちの音がやけに大きく聞こえる。

「夏の大会が終われば……。
いや、なんでもない。」

途中からもごもごとしてしまった言葉に、ようやく百目鬼が何を気にしているのかが分かった。

柔道部の心配をしていたのだ。

バスケ部がクラスマッチでバスケをすることもあるし、それはどの部活であってもそういう事はある。
一応試合形式だったし、柔道のルールでやった話だ。
俺も今の様に飛び蹴りはしていない。

それに、百目鬼から古武術の匂いは感じられない。
どちらかというと、スポーツとしての柔道と総合格闘技が好きそうなそんな感じの体の動きだ。

だから、大丈夫とでも自分は思ったのだろうか。

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