世界の終わり方

1

※三角関係、多視点で一人称のキャラがコロコロ変わります。


「悠馬、おはよー。」

ことさら明るく聞こえる声を出して俺は悠馬に抱き着く。
悠馬は別に嫌がるそぶりも見せず「おはよう」と返す。

友人としてはスキンシップ過多だという事は理解している。
だけど、“そういう”キャラで押し通してしまえば何とかなるものだ。

どう考えても友人としては近すぎる位置なんだろうけど、それでも友達だっていう開き直りで居座る。
だって、告白したらきっと断られてしまう。

そうしたら、今までの友人関係はきっと無かったことにされてしまう。
そんな恐ろしいことをする勇気はなかった。

だから、これは俺が悠馬に近づける一番近い距離。
恋心を捨てることもできず、かといって正面からぶつかることもできない俺の精いっぱいだった。

それに、そんなに悠馬は嫌がって無いと思う。
俺の希望的観測による思いこみかもしれないけれど案外うまくやってると思う。

それに悠馬には今彼女は居ないらしいし。

なら、こうしてもう少しだけ悠馬にとっての一番近い場所を独占したい。そう思っても罰は当たらないんじゃないかと思って、でも怖くてたまらなくてなるたけ馬鹿みたいに見えるように笑みを浮かべた。


**********

俺の幼馴染は馬鹿だ。
どのくらい馬鹿かっていうと、まるで能天気の様にふるまっているのに帰ってくると真っ先に俺の家に来てビービーと泣く位には馬鹿だ。

今も、まるで自分がこの部屋の主みたいに俺のベッドに突っ伏して涙を流していた。

理由は知っていた。
随分前に本人から聞かされた。

本人の言いぶりによれば道ならぬ恋をしているらしいが、俺に言わせてみれば単に一人で自己完結しているだけだ。
そもそも、たかが同性に恋をしたくらいで道ならぬとか言われても鼻で笑ってしまう。

まあ、そういう俺が好きなのはごの目を真っ赤に泣きはらしているこいつな訳だから、馬鹿なもの同士なのかもしれない。

過剰なスキンシップをする幼馴染を遠目で眺めて、ああ馬鹿だなと感じるのが幼馴染に対してなのか自分に対してなのかは考えたくはない。

幼馴染が悠馬に対して友情を装って近づいているみたいに、俺も幼馴染を装ってこいつの隣にいるのだ。

似たもの同士だな、と思う。
ふられることが分かり切ってるから言わないが、こいつも言うつもりが無いらしいのでいつかはきっと自然消滅するのだ。

それからゆっくりとこいつを手に入れればいい。
だって、なんだかんだでこいつが一番信頼しているのは俺なのだ。

鼻をすすりながら泣く幼馴染の背中をさすりながら、それでもこいつが俺以外の人間のために泣くのは嫌だなと思った。

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