×××ゲーム

10

ふわふわとした頭で帰路についた。
松尾と並んで歩くのだけれど、彼の方ばかり気になってしまう。

ドキドキとなり続ける心臓が痛い。
自分でも悪趣味だとわかっているけど、あれは無理だ。
意識するなっていう方が難しい。

ある意味ちょろいし、松尾たちの思うつぼなのかもしれない。

二人でぽつりぽつりと会話をしながら昨日と同じ場所まで一緒に帰った。



日曜の夜「曲完成しました」と、なぜかいつもと違う口調でメッセージが入った。
本当に曲を作ったのだろうか。

言っているだけかもしれないし、すごく俺の事を馬鹿にするような曲を適当に歌うのかもしれない。
と思ったところで後者の想像は否定する。

俺に対して何も思い浮かばない事があって曲を使いまわすことはあっても、少なくともそういう適当なことをする奴には思えなかった。
罰ゲームは適当なことじゃないのか。それはそうなんだけど彼のバンドの曲を聞いて、何となくそんな事はしないだろうなと思った。

俺のことは冒涜しても、音楽は冒涜しない。なんかそんな感じ。


実際のところはよく知らない。
同じクラスってだけだから、松尾がどんなやつなのかごたごた考えてもどうしようもない。


それに明日の放課後馬鹿にするような笑みを浮かべられても、もうどうでもよくなってしまっているのだ。



もう何となく松尾と昼飯を食べるのが普通みたいなノリになってしまっているし、もう誰も態々こちらをうかがうように見てこない。

相変わらず松尾はニヤニヤとこちらを見てきてドキドキ甘ったるいことを言う。

「そういや、軽音部連れてったんだっけ? どーだった?」
「別に普通に練習見てもらっただけだけど」

彼氏の部活見学とかって恋人っぽいよね。
コーヒー牛乳のストローをすすりながら松尾が言った。

恋人っぽいのか? よく分からない。

「ん? 飲む?」

先ほどまで口をつけていたコーヒー牛乳をついっと傾けられる。
こちらの方がよほど恋人らしいことな気がするけれど、どうでもないらしい。

「あれ? 穂田甘いもの好きでしょ?」

ぼんやりとコーヒー牛乳のパックを見ているとそう言われる。
多分初めて名前を呼ばれた。俺の苗字知ってたんだと素直に驚いてしまう。

あと甘いものは正直好きだ。
甘いもの好きそうな顔でもしてるのかと自分の頬を思わずペタペタと触ってしまうと、松尾が面白そうに笑った。

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