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ローレライに口付を

4-3

赤羽の指先が俺の歯列を丁寧になぞる。
それから、舌を確認するように撫でる。

奥に差し込まれた赤羽の指にえずきそうになる。
思わず舌で赤羽の指を押し返してしまう。

赤羽のゴクリという唾を飲み込む音が聞こえた。

「ああ、ローレライ。いつか俺のために歌を唄って欲しい。
それから、他の男には絶対に歌を聞かせちゃだめだからね。」

言い聞かせるようにそう伝えられる。
それから赤羽は俺の唾液に濡れた指でもう一度俺の唇をなぞった。

唾液でぬれた指を見ると、俺が悪い訳じゃないのにいたたまれない気持ちになる。

赤羽は俺が視線をそらしたのに、嬉しそうに笑う。

それから、多分俺が嫌がるのを見たかったのだろう。
俺の唾液でぬれた指をそっと自分でも舐める。

「まあ、普段は筆談がいいのであれば、少しは俺も我慢しよう。」


赤羽は何も言わない俺に諦めたのか再び絵筆を握る。
そして、歌を口ずさみ始める。

それはあの日俺が歌ったものだった。
俺よりもよほど上手い歌声をぼんやりと聞きながら彼の走らせる絵筆の先をずっと眺めていた。

4話了


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